太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)とは?目的や仕組み、卒FIT後の対策を解説

太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)とは?目的や仕組み、卒FIT後の対策を解説 太陽光

FITってそもそもどんな制度?
売電価格が下がってるって本当?
FITが終わったあとはどうすればいい?

再生可能エネルギーの普及が進む中、太陽光発電を導入する家庭が増えています。その仕組みを支えてきたのがFIT(固定価格買取制度)です。

FITは、自家発電の電気を一定の価格で買い取ってもらえる制度であり、太陽光発電の導入を検討するうえで欠かせない存在だといえるでしょう。

一方で、売電価格は年々下がっており、卒FITを迎える家庭も増加しています。売電から自家消費へとシフトする動きが進む中、「今はどうするのが得なのか?」に悩む方も多いでしょう。

この記事では、FIT制度の目的・仕組みから売電価格の最新動向、卒FIT後の対策までをわかりやすく解説します。

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FITの基礎知識

FITの基礎知識

日本の再エネ推進にとって重要な政策であるFITは、太陽光発電の導入を検討する際に押さえておきたい制度です。まずは、FITの基本と誕生の背景、制度を支える仕組みを見ていきましょう。

FITとは

FITとは、再エネ(再生可能エネルギー)で発電した電気を、国が定める価格で電力会社が一定期間買い取る制度です。正式名称を「固定価格買取制度」といいます。

固定価格買取制度の英語表記「Feed in Tariff(フィードインタリフ)」の頭文字を取って、FITという通称になっています。

電力会社は、FIT認定を受けた再エネ発電の電力を、必ず買い取らなければなりません。買取価格と期間も固定されているため、設備投資の回収計画が立てやすく、発電事業者の収益が保証される仕組みとなっています。

FITの対象となる再エネ発電は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5つです。日本では、とくに太陽光発電の普及を大きく後押ししています。

FITが誕生した背景

FIT制度が導入された背景には、主に日本のエネルギー事情環境への配慮があります。

FITが誕生した背景その1:日本のエネルギー事情

日本は資源が乏しく、エネルギーの多くを海外に依存している
→国際情勢の変化で供給が不安定になりやすい
→燃料価格の上昇が電気料金にも影響しやすい

国内で安定して利用できる再エネの活用が求められている

FITが誕生した背景その2:環境への配慮

日本は火力発電が中心で、CO₂排出量が多い
→脱炭素社会の実現が世界的な課題
→クリーンな電源への転換が必要

再エネの普及により環境負荷を軽減できる

再エネの発電設備は設置コストが大きいため、FITによって一定期間の売電収入を保証し、投資回収の見通しを立てやすくしています。一般家庭や事業者でも再エネを導入しやすくなり、普及の促進につなげることがFITの狙いです。

FITを支える「再エネ賦課金」

FITでは、電力会社の買取にかかる費用を国民が負担しています。電気料金の明細に「再エネ賦課金(再エネ発電促進賦課金)」と記載されている費用です。

再エネはまだ発電コストが高く、市場競争力が十分ではありません。そこで国はFITにより、電力会社に再エネ電気を買い取らせ、その費用を国民が負担する仕組みを導入しています。国全体で再エネの普及を後押しし、競争によるコスト低下を図っているのです。

再エネ賦課金単価は国が年度ごとに決めており、FITが始まってから上昇傾向にあります。

再エネ発電の設備が多くなると電力会社の買取量も増えるため、再エネ賦課金単価が上昇していることは、再エネの普及が順調に進んでいる証拠だといえます。

FITとFIPの違い

再エネの普及が進む中、FITだけでなく新たな仕組みとしてFIPも導入されています。FIPは市場連動型の支援であり、固定価格で買い取るFITとは異なる制度です。

FITが売電価格を一定に保証するのに対し、FIPでは電力市場の価格にプレミアム(上乗せ額)を加えた形で収益を得ます。発電事業者は市場の状況に応じて売電先を選ぶ必要があり、収益が市場価格に左右されるのが特徴です。

国は再エネのさらなる普及と自立を目指しており、今後はFITからFIPへ段階的に移行する方針を示しています。普及初期のサポートを目的としているFITと異なり、FIPは市場競争の中で事業成立を促す制度と位置づけられています。

FIPの対象は主に大規模な発電設備であり、現状では家庭用太陽光発電はFITが基本です。ただし、普及状況に応じて制度の対象や運用が見直される可能性もあります。

太陽光発電を導入するメリット

太陽光発電は、FITによって売電収入を得られるだけでなく、日常生活の中でも多くのメリットがあります。

太陽光発電を導入する売電以外のメリット
  • 電気代の節約になる(電力会社から購入する電気の量を減らせる)
  • 停電時にも電気を使える(非常用電源として活用できる)
  • 環境にやさしい(CO₂排出量を抑えられる)

太陽光発電は経済性と安心を両立できる住宅設備です。FITは、太陽光発電の導入を後押しする仕組みだといえます。

FITで売電するための条件

FITで売電するための条件

FITでは、対象となる発電の種類や設備規模、売電方式に決まりがあります。FITを利用するための前提条件を確認しておきましょう。

FITの対象となる発電の種類

FITの支援対象になっている発電方法をまとめました。

発電方法概要強み課題
太陽光発電太陽光を太陽電池で電気に変換する方式。住宅から大規模発電所まで幅広く普及している。設備がシンプルで保守しやすく、非常用電源としても活用できる。天候による発電量の変動が大きく、地域集中時は系統調整コストが発生する。
風力発電風の力で風車を回し発電する方式。陸上・洋上とも導入可能。昼夜を問わず風があれば発電でき、大規模化によりコストが低減しやすい。適した風況の土地が限られ、設置には広い用地が必要になる。
水力発電河川などの高低差を利用して水車を回し発電する方式。中小水力も全国に存在。長期間安定して発電でき、信頼性が高い。未開拓地点も豊富。中小規模はコストが高くなりやすく、水利権調整にも時間がかかる。
地熱発電地下の熱水や蒸気でタービンを動かし発電する方式。日本は世界有数の地熱資源国。天候に左右されず24時間稼働でき、ベース電源として期待できる。開発に長期間と多額の投資が必要であり、温泉地などとの調整が課題。
バイオマス発電木材・農作物残さ・食品廃棄物など、生物由来資源を燃料とする方式。廃棄物を有効活用でき、安定的・計画的に運転しやすい。燃料の確保と輸送・保管にコストがかかり、供給体制が重要。

上記5つのうち、個人の住宅にも設置できる発電システムは、実質的に太陽光発電のみです。

全量売電と余剰売電の違い

売電には全量売電と余剰売電の2つの方式があります。

全量売電:太陽光発電でつくった電気をすべて電力会社に売る方式。事業用など規模の大きい発電設備で利用される。

余剰売電:自宅で使用した後に余った電気だけを電力会社に売る方式。一般家庭の太陽光発電では余剰売電が採用される。

FITでは、10kW未満および10~50kW未満の太陽光発電は余剰売電が基本とされています。家庭用として太陽光発電を導入する場合は、まず自家消費を行い、使いきれなかった電気を売るのが前提です。

家庭用FITの適用条件と売電期間

個人の太陽光発電でFITを適用できるのは、10kW未満の規模の設備です。住宅の屋根に設置できる規模であり、一般家庭が導入する太陽光発電はこの区分に該当します。

売電期間は原則10年間、契約時に決まった売電単価が期間中ずっと適用されます。

2025年10月以降に認定された太陽光発電については、売電単価が最初の数年とその後で異なる「段階価格制」が採られるようになっています。契約時に決まった単価が期間中ずっと適用されるわけではない点に注意しましょう。

10kW以上の事業用設備は、設置規模が大きくなる分、適用される制度内容も異なります。売電期間は20年間に設定されており、設備投資の回収を見据えた長期的な収益確保が可能です。

ただし、事業用は手続きや設備条件が厳しく、導入にはより高いコストと専門的な管理が求められます。

FITの売電価格と今後の傾向

FITの売電価格と今後の傾向

FITの売電価格は年々見直され、以前のような高単価ではなくなってきているのが実情です。売電単価の現状と推移、変化の背景を確認しましょう。

現在の太陽光発電の売電価格

太陽光発電のFIT売電価格は、認定を受ける年度によって異なります。

これまでは売電期間(10年間)の売電価格が毎年一定でしたが、2025年10月以降は早期の投資回収を支援する「初期投資支援スキーム」が適用されています。

2025年10月以降の売電価格
  • 認定後の最初の4年間:24円/kWh
  • 5~10年目:8.3円/kWh

(出典:資源エネルギー庁

2026年度も、初期投資支援スキームが継続する予定です。

FITの売電価格は減額傾向

太陽光発電の売電価格は年々引き下げられています。FITが開始した2012年度から現在までの推移をまとめました。

年度売電価格
2012年度42円/kWh
2013年度38円/kWh
2014年度37円/kWh
2015年度33円/kWh
2016年度31円/kWh
2017年度28円/kWh
2018年度26円/kWh
2019年度24円/kWh
2020年度21円/kWh
2021年度19円/kWh
2022年度17円/kWh
2023年度16円/kWh
2024年度16円/kWh
2025年度15円/kWh(9月まで)

2024年度のみ前年度からの据え置きとなっており、ほかの年度は前年から1~4円減額されています。

2025年10月認定以降は、家庭用太陽光発電の売電価格が大きく変わります。

運転開始から1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhという階段型に変更されます。

売電価格の下落が続いている理由

太陽光発電の売電価格は、電力市場の状況や政策方針の変化を踏まえ、段階的な見直しが進められています。

売電価格の下落が続いている主な理由
  • 太陽光発電システムの価格が下がっており、以前のように高い売電単価で支援する必要がなくなった
  • 設置件数が増えて再エネの供給量が拡大し、買取価格の適正化が進められている
  • 再エネ賦課金の負担が国民全体に広がっており、制度継続のためにもコスト調整が求められている

卒FIT後の対策

卒FIT後の対策

FITでの売電期間には期限があり、終了を迎えると「卒FIT」と呼ばれる状態になります。ここからは、卒FIT後の売電単価に対する考え方と対策を整理します。

卒FITとは

家庭向けのFITは、住宅用太陽光発電(おおむね10kW未満)について、余剰電力を国が定めた価格で電力会社が買い取る仕組みです。契約期間は原則10年間と定められており、この期間が終了することを「卒FIT」と呼びます。

卒FITは、制度自体が終わるわけではなく、あくまでも「固定価格での買取保証」が満了することを意味するものです。卒FITを迎えるタイミングは家庭ごとに異なります。

制度開始から年月がたち、FITによる高単価買取を受けていた設備が次々に卒FITを迎えており、多くの住宅用太陽光発電がこの移行期を迎えています。

卒FIT後の売電価格はどうなる?

卒FIT後は政府による固定価格保証が終了し、電気の買い取りは大手電力会社や新電力による「再エネ買取プラン」などに切り替わるのが一般的です。

卒FIT後の買取単価の目安
  • 大手電力会社:7円~9円/kWh
  • 新電力:10円~12円/kWh

卒FIT後は売電価格が大きく下がるため、これまでのような売電収入に頼る運用は難しくなります。

卒FIT後の選択肢

卒FITを迎えた家庭が取れる選択肢には、主に次の2つがあります。

卒FIT後の選択肢その1:電力会社へ売電を続ける

FIT期間が終了しても、電力会社や新電力の再エネ買取プランに切り替えれば売電自体は可能です。ただし、通常はFIT時代より買取価格が大きく下がります。

買取単価や契約条件は会社ごとに異なるため、現在の契約を継続するか、より良い条件の会社へ切り替えるかの比較が必要です。電力自由化により電力会社の選択肢は増えており、自宅の発電量や使用状況に合うプランを選べます。

卒FIT後の選択肢その2:発電した電気を自家消費する

卒FIT後は売電単価が大きく下がる一方で、電力会社から買う電気料金は高い状態が続いています。電力会社へ売電を続けるより、自家発電した電気を自宅で使うほうが経済的です。

とくに夜間や雨の日など発電できない時間帯に備えるには、蓄電池の活用が有効です。昼間の発電電力を蓄電池にためて、必要なときに使うことで、買電を最小限に抑えられます。

卒FIT後は電気の自家消費が主流に

卒FIT後は電気の自家消費が主流に

卒FIT後の選択肢として主流になりつつあるのが、発電した電気をできる限り自宅で使う「自家消費」です。ここでは、自家消費を選ぶメリットや蓄電池の有効性を解説します。

売電より「電気を使うほうが得」になる未来

卒FIT後の売電価格はFIT時代に比べ大幅に下がりますが、電力会社から購入する電気の料金は上昇傾向が続いています。

一般的な家庭向け電気料金は30円/kWh前後で推移しており、買電単価のほうが売電単価より明らかに高くなっています。

自宅で発電した電気を安く売って高く買うより、できるだけ自家消費したほうが家計にとって有利だといえます。

卒FITを迎える家庭では、電気の売り先を考えるよりも、電気の使い方を最適化することが大切です。太陽光発電の価値が最大化され、日常的な光熱費の負担軽減を図れます。

自家消費率を高めるには蓄電池が重要

太陽光発電だけでは、自家消費率は平均で30%前後にとどまります。太陽光発電のピークは昼間である一方、家庭における電気の需要は夜間に大きくなるからです。

蓄電池を導入し、昼間に余った電力をためて朝夕や夜間に使えば、買電量を大幅に減らすことが可能です。自家消費率を60~80%に引き上げることも可能だといわれています。

太陽光発電を単独で導入するより、蓄電池を組み合わせたほうがより合理的にエネルギーを生かせる時代となっているのです。

蓄電池は停電対策など非常時にも役立つ

蓄電池には経済的なメリットだけでなく、停電などの非常時に役立つというメリットもあります。

近年は台風や地震などの自然災害が増え、停電が長期化する事例も少なくありません。蓄電池があれば電気を蓄電池から供給できるため、生活に必要な最低限の電気を確保できます。

太陽光発電システムにも、停電が起こったときに「自立運転モード」に切り替えられる機能があります。ただし、使える電力には制限があるほか、通常時と同じく太陽光パネルが日光を受けられない場合は発電できません。

電力会社からの供給に依存しすぎない暮らしは、災害時にも安心できる住まいづくりにつながります。エネルギーを「買う」時代から、自宅で「つくり・ためて・使う」暮らしへとシフトしつつあり、安心と経済性を両立できる選択肢として注目されているのです。

太陽光発電と蓄電池は同時導入がおすすめ

太陽光発電と蓄電池は同時導入がおすすめ

太陽光発電と蓄電池を同時に導入するご家庭は、年々増加傾向にあります。同時導入で得られるメリットや補助金の活用、業者の選び方について解説します。

太陽光+蓄電池を同時導入するメリット

太陽光発電と蓄電池を別々に導入すると、それぞれで工事や設計が発生し手間やコストがかかります。

一方、同時導入なら工事をまとめて行えるため、経済的・時間的に無駄がありません。

同時導入で費用を抑えやすい理由
  • 工事が1回で済み、施工費を削減できる
  • ハイブリッド型の場合、パワーコンディショナを共有できるケースがある
  • 補助金の条件にあてはまりやすく、実質負担を減らしやすい

補助金の活用で導入コストの削減が可能

太陽光発電や蓄電池の導入を後押しするために、国や自治体でさまざまな補助金制度が設けられています。

国・自治体の主な補助制度
  • DR補助金(需給調整支援):再エネ導入による需給調整力の確保
  • 子育てエコホーム支援事業:省エネ性の高い住宅を普及させる支援
  • ZEH+補助金:ZEHを超える高性能住宅の普及
  • 東京都の補助金:再エネ活用住宅の普及促進

上記の内容は変更される場合があるので、常に最新情報をご確認ください。

信頼できる販売・施工業者の選び方

蓄電池は長期使用が前提となるため、製品の品質だけでなく業者のサポート体制も重要です。信頼できる販売・施工業者を選ぶことが、安心して使い続けるためのポイントになります。

販売・施工業者選びで確認しておきたいポイント
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太陽光発電のFITまとめ

まとめ
まとめとパソコンイメージ

FITは再エネの普及を支えてきた仕組みであり、太陽光発電を導入するご家庭にとって一定のメリットがあります。しかし、売電価格は年々下がっているため、卒FIT後の対策として電気の自家消費を高めることが重要です。

この記事のポイント
  • FITは再エネ電力を一定価格で買い取る国の制度
  • 売電価格は年々下落傾向にある
  • 卒FIT後は売電の継続や自家消費が選択肢
  • 電気料金が高い今は、売るより家で使う方がお得になりやすい
  • 蓄電池を併用すれば自家消費率を高め、停電時にも安心
  • 補助金の活用で導入費を抑えられる可能性がある
  • 業者選びでは実績とアフターサポートをチェック

電気の自家消費を目指して太陽光発電や蓄電池を導入するなら、一括見積もりサイトを活用するのがおすすめです。最大4社の見積もりを完全無料で取得でき、ご家庭に合った最適なプランを見つけやすくなります。

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