家庭用太陽光発電はどんな仕組み？
自宅にはどれくらいの容量を載せればいい？
導入すると電気代はどのくらい下がる？
家庭用太陽光発電の導入を検討するなかで、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
仕組みや容量の考え方、自家消費と売電の違いなど、家庭用太陽光発電は事前に知っておきたいポイントが多く、全体像をつかみにくい設備です。基本を整理しておけば、自宅に合った導入方法や費用感を判断しやすくなります。
この記事では、家庭用太陽光発電の仕組みや容量の考え方をはじめ、メリットや注意点、導入にかかる費用までをまとめて解説します。太陽光発電を導入するか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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家庭用太陽光発電の仕組みと基本概要
家庭用太陽光発電を検討する際は、仕組みそのものを理解しておくことが大切です。まずは、家庭用太陽光発電の基本や産業用との違いを整理します。
家庭用太陽光発電とは
家庭用太陽光発電とは、住宅の屋根などにソーラーパネルを設置し、太陽の光を利用して電気を作る発電システムです。発電した電気は家庭内で使用でき、使い切れなかった分は電力会社に売ることができます。
電力会社から購入する電気を減らし、電気代の負担軽減につながる点が大きな特徴です。また、災害時などに備えた非常用電源として導入する家庭も増えています。
家庭用太陽光発電の仕組み
n型半導体とp型半導体を貼り合わせた状態で太陽光が当たると、半導体の内部で電子が動き出します。このとき、電子は一定の方向に集まりやすくなり、電気が流れる準備が整います。
半導体の外側に取り付けた電極同士を導線でつなぐと、電子が導線を通って移動し、直流の電気が流れます。
このように、光を受けて電気が生まれる仕組みを光起電力効果と呼び、太陽電池はこの原理を利用しています。太陽電池を複数組み合わせてパネル状にしたものがソーラーパネルです。
家庭用太陽光発電では、ソーラーパネルで発電した直流の電気を、パワーコンディショナーで交流の電気に変換して使用します。変換された電気は分電盤を通じて家庭内に供給され、家電や照明に使われます。
産業用太陽光発電との違い
家庭用太陽光発電と産業用太陽光発電の大きな違いは、設備の規模と目的です。
- 住宅で使う電気をまかなうことを目的としている
- 出力10kW未満が一般的で、屋根への設置が中心
- 発電した電気を売ることを主な目的としている
- 10kW以上の設備が多く、工場や空き地などに設置される
契約形態や売電の扱いも異なり、導入時に考えるポイントは大きく違います。
メガソーラーと家庭用太陽光発電の違いについては、こちら▼
家庭用太陽光発電の容量の考え方
家庭用太陽光発電の容量は、小さすぎると十分な効果を得にくく、反対に大きすぎると費用がかさむ可能性があります。
ここからは、適切な容量を決めるためのポイントを解説します。
太陽光発電の容量（kW）と発電量の考え方
太陽光発電の容量は「kW（キロワット）」で表され、設備が発電できる最大出力の目安を示します。
ただし、この数値はあくまでも条件が整った場合の最大値であり、実際の発電量は天候や日照時間、屋根の向きや角度などに左右されます。
容量が大きいほど発電量も増える傾向がありますが、必ずしも容量分の電気を常に作れるわけではない点を理解しておくことが大切です。
電力使用量から考える適切な容量の目安
ご家庭に合った容量を決める際は、日頃の電力使用量を把握することが基本になります。電気料金の明細を確認すると、月ごとの使用量（kWh）が分かり、年間の電力消費の傾向をつかめます。
一般的な4人家族では、3kW～5kW程度の太陽光発電が選ばれるケースが多く見られます。在宅時間が長いご家庭やオール電化住宅では、より大きな容量が必要になるでしょう。
一般的な4人家族の電力使用量は、1日あたりおよそ13kWhとされています。また、家庭用太陽光発電の自家消費率は30％程度が目安です。
13kWhのうち約3割にあたる3.9kWh程度を発電できる容量を確保できれば、日常的な電力使用を補うという点では十分と考えられます。
4人家族の平均定期な光熱費についてはこちら▼
家庭用ソーラーパネルは何枚あれば足りる？
ソーラーパネル1枚あたりの出力は、メーカーの公式サイトやカタログに「○○W」といった形で記載されています。
4kWの設備を導入する場合、400Wのパネルなら10枚、300Wのパネルならおよそ14枚が目安です。
設置できる枚数は屋根の広さや形状によって制限されるため、実際には屋根の条件を踏まえながら、パネルの出力と枚数のバランスを考えて決めることが重要です。
家庭用太陽光発電の自家消費と売電の仕組み
家庭用太陽光発電では、発電した電気をどのように使うかが重要なポイントになります。
ここでは、自家消費と売電の流れを整理し、それぞれの違いや考え方を分かりやすく解説します。
発電した電気の使われ方
太陽光発電で作られた電気は、最初に家庭内で使用されます。照明や家電などで日中に使う電気は、自家発電した電気から優先的にまかなわれる仕組みです。
発電した電気を家庭で直接使うことを自家消費と呼びます。
太陽光発電による発電量が家庭での使用量を上回った場合は、使い切れなかった電気が余剰電力として発生します。自家消費を増やすことで、電力会社から購入する電気を減らせるため、電気代の削減につながります。
売電の仕組み
余剰電力は電力会社に送られ、売電として扱われます。売電とは、家庭で使い切れなかった電気を電力会社に買い取ってもらう仕組みです。
- 自家消費：電気代を直接減らす効果がある手段
- 売電：発電した電気を収入に変える手段
近年は売電単価が下がっていることもあり、家庭用太陽光発電では売電よりも自家消費を重視する考え方が一般的になっています。
2025年10月以降は、FIT制度が大きく変わります。詳しくは、以下の記事で解説しています。
家庭用太陽光発電を導入するメリット
家庭用太陽光発電を導入することで、私たちの生活にさまざまな恩恵がもたらされます。具体的なメリットを見ていきましょう。
電気代を節約できる
家庭用太陽光発電の大きなメリットは、電力会社から購入する電気を減らせることです。日中に発電した電気を家庭で使うことで、電気代の負担を抑えられます。
- 東京電力の従量電灯Bを基にした電気料金単価は1kWhあたり約33.39円
- 自家消費率30%の場合、電気代の削減額は1日約130円、年間では約4万7,000円
一般的な3～4人世帯であれば、年間でおよそ5万円の電気代削減を期待できることになります。
余剰電力を売電して収入につなげられる
家庭用太陽光発電では、発電して使い切れなかった余剰電力を売電できます。FIT制度を活用することで、余剰電力を一定期間、固定価格で電力会社に買い取ってもらうことが可能です。
太陽光発電自体は電気をためておくことができないため、FIT制度の認定や電力会社との系統連系を行わない場合、余った電気を活用できません。
余剰電力を無駄なく活用するという点でも、FIT制度を利用した売電は、家庭用太陽光発電の経済的メリットを高める重要な要素といえます。
災害時や停電時の非常用電源として役立つ
家庭用太陽光発電は、災害時や停電時の備えとしても役立ちます。地震や台風などの影響で停電が発生すると、電力会社からの電気は使えなくなりますが、太陽光発電があれば日中に電気を作ることが可能です。
太陽光発電専用のコンセントなどを通じて、照明やスマートフォンの充電、ラジオの使用といった最低限の電力を確保できます。情報収集や連絡手段を維持できる点は、非常時の行動を支える大切なポイントといえるでしょう。
蓄電池を導入すると、太陽光発電で作った電気をためておけるため、停電時でも夜間や天候が悪い状況で電気を使えます。
太陽光発電のメリットについてより詳しく知りたい方はこちら▼
家庭用太陽光発電の導入前に知っておきたい注意点
家庭用太陽光発電にはメリットだけでなく、いくつかの注意点もあります。導入前に気をつけるべきポイントをまとめました。
初期費用がかかる
家庭用太陽光発電は、導入時にまとまった初期費用がかかります。
電気代の削減や売電によって、長期的には初期費用の回収を目指せますが、導入時点では負担を感じやすい点に注意しましょう。
天候や季節により発電量が変動する
家庭用太陽光発電の発電量は、天候や季節によって大きく変動します。晴天の日は発電量が伸びますが、曇りや雨の日は太陽光が十分に届かず、発電量は低下します。
年間を通して同じ量の電気を安定して作れるわけではありません。発電量には天候や季節による波があることを前提に、電気代削減額や売電収入を見積もることが重要です。
夜間は発電できない
太陽光発電は太陽の光を利用して発電するため、夜間は発電できません。
停電が発生した場合でも、太陽が出ていない時間帯は発電できません。太陽光発電はあくまで日中の電力を補う設備であり、24時間電気をまかなえるわけではない点を理解しておく必要があります。
設置環境によって発電量に差が出る
太陽光発電の発電量は、設置環境にも大きく左右されます。屋根の向きや角度、周囲の建物や樹木による影の有無などが、発電効率に影響します。
導入前には設置場所の日照条件を確認し、想定される発電量を把握しておくことが重要です。
定期的な点検やメンテナンスが必要
家庭用太陽光発電には、長期間安定して使い続けるための定期的な点検やメンテナンスが求められます。
ソーラーパネルは屋外に設置されるため、汚れや落ち葉の付着によって発電効率が下がることがあります。また、パワーコンディショナーなどの機器も経年劣化が避けられません。
定期的に点検を行い、異常を早めに見つけることで、発電量の低下や故障リスクを抑えやすくなります。
エコ×エネの相談窓口では独自アンケートを実施し、太陽光発電を実際に導入した方がデメリットに感じていることを調査しました。導入を検討されている方は、注意点もご確認ください。
家庭用太陽光発電の導入にかかる費用
家庭用太陽光発電の導入を検討している方のなかには、どのくらいの費用がかかるのか気になっている方もいるでしょう。
ここからは、太陽光発電の設置費用の相場や維持管理費用の目安をご紹介します。
設置費用（初期費用）の相場
資源エネルギー庁の資料によると、2024年の太陽光発電の設置費用の平均は、1kWあたり29.5万円です（出典：資源エネルギー庁）。ソーラーパネルの容量（kW）が大きくなるほど、設置費用も高くなります。
容量別の設置費用の目安は次のとおりです。
| ソーラーパネルの容量 | 設置費用の目安 |
| 3kW | 約88.5万円 |
| 4kW | 約118.0万円 |
| 5kW | 約147.5万円 |
| 6kW | 約177.0万円 |
| 7kW | 約206.5万円 |
| 8kW | 約236.0万円 |
| 9kW | 約265.5万円 |
| 10kW | 約295.0万円 |
新築の場合は住宅の設計段階からシステムを組み込めるため、リフォームの場合より設置費用が安くなる傾向があります。
太陽光発電の設置費用を詳しく解説した記事も、参考にしてみてください。
維持管理費用の目安
家庭用太陽光発電は、発電量維持や安全性確保の観点から、3～5年ごとに1回程度の定期点検が推奨されています。資源エネルギー庁の資料によると、5kWの設備における1回あたりの定期点検費用の相場は約4.1万円です（出典：資源エネルギー庁）。
また、パワーコンディショナーは年々劣化していくため、20年間ごとの交換が想定されています。5kWの設備におけるパワーコンディショナーの交換費用の相場は約42.3万円です。
定期点検を4年に1回、パワーコンディショナーの交換を20年に1回行う場合、5kWの設備の年間維持管理費は1kWあたり約6,300円と計算できます。
なお、ソーラーパネルの寿命は一般的に20～30年とされていますが、適切な環境で使用されていれば30年以上にわたって発電を継続できるケースもあります。
家庭用太陽光発電を少しでも安く導入する方法
家庭用太陽光発電の導入費用は、工夫次第で節約することが可能です。太陽光発電をできるだけ安く導入するコツを見ていきましょう。
自治体の補助金を活用する
家庭用太陽光発電の導入費用は、補助金の活用で大幅に抑えられます。自治体によって補助金制度の内容は異なるため、最新情報を確認することが重要です。
- 東京都の補助金：最大45万円
- 文京区の補助金：最大70万円
国による家庭用太陽光発電への直接的な補助金は、2014年に終了しています。現在は、断熱改修や高効率設備の導入とあわせて、太陽光発電を設置する場合に対象となるのが一般的です。
0円ソーラーを活用する
0円ソーラーとは、実質的に初期費用0円で太陽光発電を利用できる仕組みです。
事業者が初期費用を負担して住宅に太陽光発電システムを設置し、利用者は電気料金（PPAモデル）またはリース料を支払うことで、実質無料で太陽光発電を利用できます。
長期的な視点で見ると、発電した電気を自由に使い、売電収入も得られる自己所有のほうが、経済的なメリットを実感しやすくなります。
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家庭用太陽光発電は蓄電池とのセット導入を
家庭用太陽光発電と一緒に蓄電池も導入すれば、太陽光発電のデメリットを広くカバーすることが可能です。
ここでは、太陽光発電と蓄電池を併用するメリットと設置費用の相場を解説します。
太陽光発電と蓄電池を併用するメリット
家庭用太陽光発電と蓄電池を併用すると、以下のようなメリットを得られます。
- 自家消費量を増やしやすい：日中に発電して使い切れなかった電力を蓄電池にためておき、夜間や早朝に使えるため、購入する電力量を抑えやすくなります。
- 電気料金の削減を見込みやすい：単価が高くなる時間帯の電力を蓄電池でまかなえるため、時間帯別料金プランでも支出をコントロールできます。
- 停電時の安心につながる：蓄電池に電力があれば、停電が起きても冷蔵庫・照明・通信機器などを一定時間使用できます。
- EVとの相性が良い：将来EVやV2Hを導入する場合でも、家庭内のエネルギーマネジメントを一元化しやすくなります。
太陽光発電+蓄電池の設置費用の相場
家庭用蓄電池の容量は、大きく次の3タイプに分けられます。
| タイプ | 容量の目安 | 本体価格の相場 |
| コンパクトタイプ | 1～5kWh | 90～150万円 |
| 中容量タイプ | 5～10kWh | 150～180万円 |
| 大容量タイプ | 10kWh～ | 180～250万円 |
上記を踏まえて太陽光発電+蓄電池の設置費用を計算した結果は以下のとおりです。
| ソーラーパネルの容量 | 太陽光発電+蓄電池の設置費用の目安 |
| 3kW | 約178.5万～338.5万円 |
| 4kW | 約208.0万～368.0万円 |
| 5kW | 約237.5万～397.5万円 |
| 6kW | 約267.0万～427.0万円 |
| 7kW | 約296.5万～456.5万円 |
| 8kW | 約326.0万～486.0万円 |
| 9kW | 約355.5万～515.5万円 |
| 10kW | 約385.0万～545.0万円 |
家庭用太陽光発電まとめ
家庭用太陽光発電は、電気代の節約や非常時の備えにつながる設備です。
仕組みや容量の考え方、自家消費と売電の違いを理解しておくことで、自宅に合った導入方法を判断しやすくなります。
- 家庭用太陽光発電は出力10kW未満が一般的で、主に住宅の屋根に設置される
- 発電した電気は自家消費が優先され、余剰分は売電できる
- 容量は電力使用量や在宅時間を基準に、3～5kW前後が選ばれやすい
- 売電単価は年々下がっており、自家消費を重視する考え方が主流
- 設置費用は容量に応じて増え、5kWで150万円前後が目安
- 天候や設置環境によって発電量に差が出る点に注意が必要
- 蓄電池を併用すると電気の使い勝手や停電時の安心感が高まる
初期費用はかかりますが、長期的には電気代削減や売電による回収を期待できます。ご家庭の電力使用量やライフスタイルを踏まえ、無理のない形で検討することが大切です。
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