本記事では、川崎市が環境省の「脱炭素先行地域」として取り組んでいる、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)及び公共部門における脱炭素化の取組を紹介します。
神奈川県の北東部に位置する川崎市は、多摩川を挟んで東京都と隣接する政令指定都市です。京浜工業地帯の中核として日本経済をけん引しており、化学工業や石油・石炭製品製造業の製造品出荷額等は政令市で最大規模を誇ります。
臨海部に産業が集積している特徴から、脱炭素先行地域に選定された当時(2022年4月)、川崎市の温室効果ガス排出量は政令市の中で最大でした。
川崎市では、市域の排出量の7割を占める産業部門については、「川崎カーボンニュートラルコンビナート構想」のもと、臨海部のカーボンニュートラル化の取組が進められています。
また、カーボンニュートラル実現のためには、民生部門や公共部門についても脱炭素化を進める必要があります。
そこで川崎市は、脱炭素先行地域の取組として、「溝口駅周辺民間施設群」における取組と「市全域の公共施設群」における取組を展開しています。
川崎市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

川崎市は、2050年の脱炭素社会実現を目指し、脱炭素に関する取組を積み重ねてきました。
- 平成21年:「川崎市地球温暖化対策推進条例」に基づき、温室効果ガス大規模排出事業者に対策計画書・報告書の作成・提出を義務付け
- 平成27年:全国に先駆けて「水素社会の実現に向けた川崎水素戦略」を策定
- 令和元年7月:内閣府「SDGs未来都市」に選定
- 令和2年2月:ゼロカーボンシティを表明
- 令和2年11月:脱炭素戦略「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」を策定し、脱炭素モデル地区「脱炭素アクションみぞのくち」を開始
- 令和3年7月:事業者・団体による「脱炭素アクションみぞのくち推進会議」が発足
これらの取組を経て、令和4年4月26日には環境省の脱炭素先行地域(第1回)に選ばれています。
- 計画の名称
川崎市の交通要衝「みぞのくち」からはじめるCO₂最大排出都市の脱炭素アクション - 計画の内容
高津区溝口周辺の民間施設群(オフィスビル・商業ビル・物流倉庫など33施設)と、市内全域の公共施設群(約900施設)を対象に、太陽光発電の導入やごみ焼却施設のバイオマス発電の活用を進め、脱炭素ドミノの創出を目指す取組です。
出典:本市の「脱炭素先行地域」の取組
出典:川崎市の交通要衝「みぞのくち」からはじめるCO₂最大排出都市の脱炭素アクション
川崎市が進める脱炭素の具体的な取組

川崎市の脱炭素まちづくりでは、以下の二つの取組が進められています。
出典:川崎市の交通要衝「みぞのくち」からはじめるCO₂最大排出都市の脱炭素アクション
「溝口駅周辺民間施設群」における取組
「脱炭素アクションみぞのくち」として高津区溝口周辺をモデル地区に、官民連携で先進的な脱炭素取組を進めてきた実績を生かし、民間施設群を対象とする取組が展開されています。
交通の要衝・溝口周辺の民間施設群による太陽光発電と再エネ電力調達
高津区溝口周辺の商業ビル・オフィスビル・物流倉庫・小売店など33施設を対象に、太陽光発電設備の設置や省エネ設備の更新、再エネ100%電力への切り替えを図っています。
東急電鉄や川崎信用金庫、ヤマト運輸などが、自社所有施設で太陽光発電導入や省エネ設備の更新を進めています。
多くの人が行き交うこの地域での取組の可視化は、市民・事業者への波及効果を狙う上で重要な意味を持っています。
「市全域の公共施設群」における率先取組
川崎市役所は、民生業務部門で最大規模のCO₂排出事業者です。
市役所は、市民・事業者の身近な施設であり、市域への波及効果が大きく見込めることから、行政による率先した取組が進められています。
市公共施設の脱炭素化
全ての市公共施設の省エネ化や再エネ100%電力の導入、設置可能な市公共施設の約半数への太陽光発電設備の設置に向けて、取組が進められています。
再エネ100%電力については、川崎市が出資して設立した地域エネルギー会社を通じ、市内で生み出された電気(川崎産グリーン電力)を市内で活用するエネルギーの地産地消の取組が進められています。
地域エネルギー会社「川崎未来エナジー(株)」と川崎産グリーン電力

令和5(2023)年10月に川崎市が過半出資し、地域エネルギー会社「川崎未来エナジー株式会社」が設立されています。
川崎市では、ごみを燃やした熱で電気を作る「ごみ発電所」、学校に設置された太陽光発電を利用して作る「スクール発電所」、家庭で太陽光発電を利用して作る「ホーム発電所」の取組から生まれた電力を「川崎産グリーン電力」と呼んでいます。
市内で作られた地球にやさしい川崎産グリーン電力を、川崎未来エナジー株式会社を通じて、市立学校や等々力緑地のスタジアムなどに供給するエネルギーの地産地消の取組が進められています。
災害対応と資源循環による民生電力以外の脱炭素化
災害時のライフラインを担う交通・金融機関の施設に蓄電池を設置する取組が進められています。
また、家庭から出るプラスチック製容器包装とプラスチック製品の一括回収等を進めることで、市のごみ焼却施設における廃棄物焼却由来の温室効果ガス排出量について、2030年度までに2013年度比24%削減することを目安としています。
川崎市の脱炭素まちづくりまとめ
川崎市の脱炭素先行地域の取組は、「脱炭素アクションみぞのくち」で培われた官民連携の土台を生かしながら、溝口周辺の民間施設群と市内全域の公共施設群の両輪で脱炭素化を進めている点に特徴があります。
先行地域における取組により先進的な脱炭素モデルを構築し、その成果を市域全域へ波及させることを目指しています。

