厚沢部町は、北海道檜山郡にある人口約3,000人(令和8年7月時点)の町です。過疎を逆手に取った「世界一素敵な過疎のまち」というまちづくりを掲げ、移住体験「ちょっと暮らし」や親子で地元保育園に通う「保育園留学」など、独自の交流人口拡大策で全国的にも注目されています。
厚沢部町の脱炭素の柱は、風況の良さを生かした国産中型風力発電の導入です。日本の風車メーカーや地元の建設業者と連携し、建設工事から維持管理まで一貫して地元事業者が担う体制を築くことで、雇用拡大と地域経済の活性化につなげています。
出典:厚沢部町
厚沢部町が脱炭素先行地域になるまでの歩み

厚沢部町は、平成21年に「厚沢部町素敵な過疎のまちづくり基本条例」を施行し、移住体験や保育園留学といった独自の交流人口拡大策を進めてきました。この延長線上で、地域資源を生かした再エネ導入にも着手しています。
- 令和4年9月:「厚沢部町カーボンニュートラルビジョン」を策定
- 令和5年1月:2030年までのCO₂排出量ゼロ達成を目指す「厚沢部町ゼロカーボンシティ」を宣言
- 令和5年8月:地域新電力「株式会社ハチャム」を設立
これらの取り組みを経て、令和6年9月27日には環境省の脱炭素先行地域(第5回)に選ばれています。
- 計画の名称
風で循環させる世界一素敵な過疎のまち厚沢部 ~国産中型風力発電×地域共生モデル事業~ - 計画の内容
町内全域を対象に、国産中型風力発電の導入と、その建設・維持管理を地元事業者が担う体制を構築し、地域新電力を通じて電力を地産地消することで、雇用拡大と地域経済の活性化を同時に目指す取り組みです。
厚沢部町が主体となって事業を進め、共同提案者である北海道ガス株式会社や厚沢部建設協会など8者が、風力発電の運営や地元事業者の技術習得を担う体制がとられています。
出典:脱炭素先行地域の選定について
出典:風で循環させる世界一素敵な過疎のまち厚沢部 ~国産中型風力発電×地域共生モデル事業~
厚沢部町が進める脱炭素の具体的な取り組み

厚沢部町の脱炭素まちづくりでは、国産中型風力発電の導入を軸に、地元事業者の育成や町の看板事業との連携を組み合わせた取り組みが進められています。
出典:風で循環させる世界一素敵な過疎のまち厚沢部 ~国産中型風力発電×地域共生モデル事業~
地元事業者が担う国産中型風力発電の導入
厚沢部町の脱炭素計画の軸は、町有地などへの国産中型風力発電設備(5基)の導入です。
北海道教育大学函館校とも連携し、学生向けの再エネ人材育成講座やインターンを実施するほか、近隣の北海道立江差高等学校の生徒を対象にした就業体験も計画しています。風力発電の技術・ノウハウを地元に定着させることが期待されています。
地域新電力「ハチャム」による電力の地産地消
令和5年8月に町が設立した地域新電力「株式会社ハチャム」は、風力発電と太陽光発電(1,540kW)でつくった電力を町内の公共施設・地元企業・一般住宅に供給しています。
地域内で発電した電力を地域内で使う体制を整えることで、これまで町外に流出していたエネルギー代金を町内にとどめ、地域経済の循環につなげる狙いがあります。
「保育園留学」と連携した脱炭素の体験
厚沢部町は、都市部の親子が一定期間滞在しながら地元保育園に通う「保育園留学」の参加者を対象に、EVカーシェアリングサービスを提供しています。
参加者向けに脱炭素やサステナブルな暮らしを体験できる教育プログラムも用意し、町を訪れる人に脱炭素の取り組みを直接伝える機会をつくっています。
ふるさと納税ポイントを活用した住民の行動変容
厚沢部町の脱炭素まちづくりでは、ふるさと納税の地域ポイント「あっさぶe街ギフト」も活用しています。
- 自家用の太陽光発電を設置
- 地域新電力への切り替え
- 自家用車のEV・PHEVへの切り替え
森林整備を通じたJ-クレジットの創出にも取り組んでおり、再エネ導入だけでなく森林資源の活用も含めた幅広い形で脱炭素を後押ししています。
厚沢部町の脱炭素まちづくりまとめ

一般的な風力発電の導入は、大手事業者が設備を建てて終わりという形になりがちです。しかし、厚沢部町はそこにあえて地元の建設業者を組み込みました。
人口3,000人規模の町にとって、風力発電の技術やノウハウを地元に残せるかどうかは、単発の再エネ事業で終わるか、持続的な雇用につながるかを左右する分かれ目といえます。
「保育園留学」というすでに全国から人を呼び込んでいる取り組みに脱炭素の体験プログラムを重ねている点も、厚沢部町らしい発想です。地域おこしの実績とエネルギー政策を切り離さずに設計している姿勢が、厚沢部町の脱炭素先行地域計画の核になっています。

