静岡県静岡市は、県の中央部に位置し、駿河湾に面した政令指定都市です。市内には国際拠点港湾の清水港があり、物流や産業の拠点として発展してきました。一方、産業構造の変化に伴い、清水港周辺では遊休地や未利用施設が生じ、地域の活力低下が懸念されています。
そこで静岡市は、清水製油所跡地などを活用した脱炭素化を進めています。太陽光発電・大型蓄電池・エネルギーマネジメントシステムを整備するほか、再生可能エネルギーを活用してCO₂フリー水素を製造・利用する仕組みも構築します。
脱炭素化によってエネルギーの地産地消や防災力を高めながら、「みなとまち しみず」の再生につなげる取り組みです。
静岡市の脱炭素先行地域の特徴は、新たな土地利用と産業交流を促す『まちづくり』そのものの中に位置づけているところです。そして、それらの取組を民間企業主体で推進し、市が支援するスキームを構築していることも特徴の1つです。
静岡市は日本全体よりも早く人口減少が始まった地域です。そのため若い人が魅力を感じる仕事・企業を市内に増やしていくことは、行政にとって重要な課題です。
各種の就職意識調査でも、若い世代は企業の社会貢献活動やSDGsへの取組を重視する傾向が見られます。若い人は単純に大企業で働きたいだけではなく、サステナビリティなど何らかの形で社会に貢献できる働き先を求めている方もいます。
そのため、まちづくりにサステナビリティの観点を入れ込み、GXに取り組む企業を市内に増やすことは、静岡市の魅力の向上、ひいては人口減少対策としても有望だと考えています。静岡市に根差した企業と一緒になって脱炭素先行地域に応募したのには、このような観点から静岡市の魅力を磨き上げる狙いもありました。
静岡市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

静岡市は、再生可能エネルギーの地産地消や森林整備など、地域の資源を生かした脱炭素の取り組みを進めてきました。
- 平成23年度:森林環境アドプト事業を開始
- 平成28年度:「COOL CHOICE」を官民連携で推進
- 平成28年3月:下水汚泥の燃料化施設が稼働開始
- 平成29年度:清掃工場の余剰電力などを活用した「静岡市エネルギーの地産地消」を開始
- 令和2年:2050年温室効果ガス排出実質ゼロを表明
- 令和3年7月:「脱炭素社会に向けた官民連携会議」を設立
これらの取り組みを経て、令和4年4月26日には環境省の脱炭素先行地域(第1回)に選ばれています。
- 計画の名称
脱炭素を通じて新たな価値と賑わいを生む「みなとまち しみず」からはじまるリノベーション - 計画の内容
「清水駅東口エリア」「日の出エリア」「恩田原・片山エリア」の3エリアを対象に、太陽光発電や大型蓄電池、地域マイクログリッドの整備を進め、CO₂フリー水素の製造・活用も組み合わせながら、清水港周辺の遊休地・未利用施設を脱炭素の拠点へと転換する取り組みです。
静岡市が主体となって事業を進め、清水駅東口エリアの地権者であるENEOS株式会社や、日の出エリアの鈴与グループ、恩田原・片山エリアのS&F地域マネジメント合同会社など、エリアごとの民間企業が設備導入を担う体制がとられています。
出典:脱炭素先行地域の取組み
出典:脱炭素を通じて新たな価値と賑わいを生む「みなとまち しみず」からはじまるリノベーション
静岡市が進める脱炭素の具体的な取り組み
静岡市の脱炭素まちづくりでは、清水港周辺で生じた遊休地や未利用施設を、開発事業と一体で再エネ拠点へと転換する取り組みが進められています。
清水駅東口エリアの自立型エネルギー供給ネットワーク

清水駅東口は、かつて製油所が稼働していた土地で、土地所有者であるENEOS株式会社がこの跡地に「次世代型エネルギープラットフォーム」を新たに整備し、太陽光発電とCO₂フリー水素を組み合わせたエネルギー拠点づくりを進めています。
令和6年度末には、メガソーラー・大型蓄電池・エネルギーマネジメントシステム・周辺施設への自営線・水電解型水素ステーション等の整備が完了し、すでに運用が始まっています。
日の出エリアの太陽光発電と系統用蓄電池

日の出エリアでは、「日の出地域エネルギー供給プロジェクト」として、既存の倉庫などに太陽光発電設備を設置しています。
恩田原・片山エリアのPPA太陽光発電と電力融通

土地区画整理が進む恩田原・片山エリアでは、新たに進出する企業の屋根を活用したPPA方式の太陽光発電設備を設置しています。
市内全域のPPA太陽光発電と森林の吸収源対策
エリア内の再エネだけでは電力の実質ゼロを達成できないため、静岡市は市内全域でPPAによる太陽光発電の導入を拡大し、余剰電力を相対契約で脱炭素先行地域に供給する仕組みを構築します。これにより、これまで域外に流出していたエネルギー代金の域内循環を図ります。
市域の約76%を占める森林について、持続可能な森林経営と計画的な間伐によって吸収源対策を強化し、山間部への資金還流にもつなげます。
静岡市の脱炭素まちづくりまとめ

かつて産業の中心だった清水港周辺の遊休地は、再エネ設備や水素製造といった新しい役割を担う場所に生まれ変わろうとしています。
土地の成り立ちに応じた民間企業がエリアごとに事業を担い、市域全域に広がる太陽光発電と市域の大部分を占める森林がこの動きを後押ししています。
エネルギーの地産地消は、これまで域外に流れていたお金を地域に留める効果も期待されており、都市と山間部がそれぞれの役割を担いながら、「みなとまち しみず」の再生を目指しています。

