長崎港から西へ約100kmの五島列島にある五島市は、10の有人島と53の無人島からなる自治体です。
浮体式洋上風力発電の先進地として知られ、令和2年にゼロカーボンシティを表明、令和6年には環境省の脱炭素先行地域(第5回)に選定されています。
すでに再生可能エネルギーの導入が進む一方、離島特有の課題である送電容量の制約に直面しており、「地域アグリゲータ」という新しい仕組みで解決を図る取り組みが注目されています。
五島市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

令和2年12月17日、五島市は「2050年カーボンニュートラル・全国フォーラム」の中で、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を表明しました。
令和6年9月27日には、環境省の脱炭素先行地域(第5回)に選ばれました。全国から選定された9自治体のうち、長崎県からは松浦市とともに五島市が名を連ねています。
- 計画の名称
系統混雑エリアへ再エネ導入をさらに進める「地域アグリゲータ」モデル~出力制御を地域全体でマネジメント~ - 計画の内容
地域新電力・発電事業者・金融機関などが連携する「地域アグリゲータ」を新設し、送電容量の制約がある離島において既存の太陽光・風力発電を最大限に活用しながら、地域に利益を還元する仕組みを構築する取り組みです。
五島市が主体となって事業を進め、共同提案者である五島市民電力株式会社や有限会社イー・ウィンドなどが発電・需給管理・PPA事業の運営を担う体制がとられています。
出典:脱炭素社会の先行実現を目指す「脱炭素先行地域(第5回)」に選定されました
出典:系統混雑エリアへ再エネ導入をさらに進める「地域アグリゲータ」モデル
五島市の脱炭素に向けた具体的な取り組み

五島市にはすでに太陽光発電53MW・風力発電19MWが導入されていますが、送電容量の空きがないため、これ以上の再エネ導入を進めると、発電した電気を送電できずに捨てざるを得ない「出力制御」が増えるおそれがあります。
そこで、発電した電気をできるだけ無駄にしないよう、4つの技術的な取り組みが進められています。
出典:系統混雑エリアへ再エネ導入をさらに進める「地域アグリゲータ」モデル
地域アグリゲータによる出力制御マネジメント
五島市で新設される「地域アグリゲータ」は、送電の混雑が予想される時間帯に発電量と蓄電池の運用をリアルタイムで調整し、送電線の容量を超えないよう管理する役割を担います。
FIT(固定価格買取制度)対象外の発電所から生じる非化石価値(環境価値)を取りまとめ、地域新電力や発電事業者に分配する仕組みも構築します。
系統末端部という制約のなかで再エネ発電所の稼働率を高め、利益の地域内還流を目指す取り組みです。
ダイナミックプライシングを活用した再エネメニュー
五島市の地域新電力「五島市民電力」は、再エネの発電量が多い時間帯に電気料金を安くする「ダイナミックプライシング」を活用したメニューを提供する予定です。
スマートメーター情報を無料で見える化できるHEMSを市内8,000台に配布し、家庭における電力消費のタイミングを発電量に合わせやすくする仕組みも整えます。
施設や家庭の行動によって送電混雑の発生を抑えながら、再エネ電力の地産地消を広げる狙いがあります。
卒FIT太陽光発電への蓄電池追加導入
五島市内にはすでに約700件の自家消費型太陽光発電が導入されており、そのうちFITの買取期間が終了した「卒FIT」の案件を中心に、蓄電池の追加導入を進めます。導入予定件数は300件です。
発電した電力を蓄電池にためることで、送電線への逆流(逆潮流)を抑え、送電混雑の発生を防ぐ狙いがあります。
リユース太陽光パネルを活用した蓄電池併設オンサイトPPA
太陽光発電が未設置の家庭や施設を対象に、中古の太陽光パネルと蓄電池を組み合わせたオンサイトPPAモデルの導入も進めています。導入予定件数は700件です。
災害時の電源確保として、医療・介護施設等との相互応援体制の協定締結も計画されています。
五島市の脱炭素まちづくりまとめ

五島市の脱炭素先行地域の取り組みは、送電容量の制約という離島特有の課題を、新設する地域アグリゲータによる出力制御マネジメントで乗り越えようとする点に特徴があります。
ダイナミックプライシングによる行動変容や卒FIT太陽光への蓄電池追加、リユースパネルを使ったオンサイトPPAといった多様な手法を組み合わせ、既存の再エネ資源を最大限に生かしながら地域に利益を還元しようとしています。
電気自動車の普及や藻場再生によるブルーカーボンの創出にも取り組んでおり、離島ならではの資源を生かした脱炭素まちづくりが進められています。


