十勝平野の北部、大雪山の東麓に位置する鹿追町は、神秘の湖と呼ばれる然別湖を有する観光の町であり、酪農を基幹産業とする地域です。
町内で稼働する2基のバイオガスプラントは、家畜ふん尿を資源に変える国内最大規模の施設として知られています。
この資源循環の取り組みを核に、鹿追町は町全体でのゼロカーボン化を進めています。
出典:鹿追町脱炭素先行地域事業
鹿追町の脱炭素先行地域への歩み

鹿追町は2021年、町議会定例会において「鹿追型ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。
翌2022年4月には環境省の第1回脱炭素先行地域に選定され、北海道内では上士幌町・石狩市とともに選ばれています。
| 計画・宣言 | 時期 | 目標 |
| 鹿追型ゼロカーボンシティ宣言 | 2021年 | 2050年までにカーボンニュートラルを実現、その先の「カーボンマイナス」を追求 |
| 鹿追町ゼロカーボンシティ推進戦略 | 2022年1月 | バイオガスプラントを核とした地域循環共生。将来像は「MIRAI COUNTRY」 |
「MIRAI COUNTRY」を目指す鹿追町の脱炭素施策

脱炭素先行地域計画に基づき、鹿追町はバイオガスプラントを核としながら、複数の取り組みを一体的に進めています。
国内最大規模のバイオガスプラント
家畜ふん尿や生ゴミを原料とするバイオガスプラントは、中鹿追施設と瓜幕施設の2施設で構成されています。
- 中鹿追施設
処理量約135トン/日、乳牛約1,300頭分の排せつ物を処理する能力を持ちます。稼働により市街地の悪臭問題が解消され、酪農家は排せつ物処理の労力から解放されました。プラント稼働後、町内の乳牛飼養頭数は増加傾向で推移しています。 - 瓜幕施設
処理量約210トン/日、250kWの発電機4基を備え、中鹿追施設と比べて2.5倍以上の処理・発電能力を持つ国内最大規模の施設です。
発電後の消化液は、良質な有機質肥料として畑や牧草地に還元されます。余剰熱は、糖度の高いブランド干しいも「甘姫」の長期保存用貯蔵設備や、チョウザメの養殖にも活用されています。
また、バイオガス中のメタンから水素を製造する水素サプライチェーン実証事業(環境省委託)にも協力しています。
自営線ネットワークで進む再エネ地産地消
鹿追町は太陽光発電と地中熱を活用した自営線ネットワークを構築し、公共施設等へのクリーンエネルギー供給を進めています。
第7期鹿追町総合計画において重点プロジェクトに位置づけられており、公共施設9施設を自営線でつないで太陽光発電や蓄電池・熱システムと組み合わせ、再エネ電力の需要と供給をマッチングさせる仕組みです。
公共施設群の電力需要を自営線で集約し、受電契約を一本化したことで、電力使用のピークを抑え基本料金を削減しています。電気料金や燃料購入費の削減効果は、年間約1,000万円程度の財政支出縮小につながると見込まれています。
また、FIT期間が終了したバイオガスプラントからの電力を、将来的に自営線ネットワークで受け入れることも可能になりました。系統制約のある地域における再エネ最大活用の先進事例として、2021年度の「北国の省エネ・新エネ大賞」では最高賞である大賞を受賞しています。
住宅にも広がるゼロカーボン支援
鹿追町は住宅分野でも複数の補助制度を用意しています。
- 住まいのゼロカーボン化推進補助制度
高性能エアコン・高効率給湯器・LED照明・節水型トイレ・断熱改修など幅広い工事を対象とし、町内認定事業者を通じて申請する補助制度です。 - 鹿追町重点対策加速化補助金
太陽光発電・蓄電池・エネルギーマネジメントシステムをセットで導入する場合に1kWあたり定額を補助するほか、高性能な窓や断熱材を使った断熱改修も対象としています。
既設の太陽光発電システムに後付けで蓄電池を導入する場合の補助制度や、電気自動車・プラグインハイブリッド車・水素燃料電池車の購入補助、省エネ家電への買換え補助なども整備されており、町民の暮らしのあらゆる場面から脱炭素化を後押ししています。
鹿追町の脱炭素まちづくりまとめ

出典:鹿追町
鹿追町はバイオガスプラントを核とした資源循環型のまちづくりを通じて、カーボンニュートラルの先にある「カーボンマイナス」を目指しています。
家畜ふん尿由来のエネルギー活用、自営線ネットワークによる電力の地産地消、住宅向けの省エネ支援が、「MIRAI COUNTRY」という将来像を支える3つの柱です。
基幹産業である酪農と環境施策を結びつけながら、鹿追町はこれからも独自の脱炭素モデルを全国に発信していきます。


