佐井村(青森県)が漁業とデジタルで進める脱炭素!海ごみを資源に変える「日本で最も小さくかわいい漁村」の挑戦

佐井村(青森県)が漁業とデジタルで進める脱炭素!海ごみを資源に変える「日本で最も小さくかわいい漁村」の挑戦 脱炭素先行地域の紹介

青森県下北半島の西側にある佐井村は、津軽海峡に面した自治体です。山地が9割以上を占める地形の中、9つの集落が海岸線や山間部に点在し、「日本で最も小さくかわいい漁村」というブランディングで知られています。

道路が寸断されると集落が孤立しやすい地形リスクに加え、漁業を中心とした基幹産業の担い手不足やエネルギー代金の域外流出という課題を抱える中、海岸に漂着するプラスチックごみを資源に変える取り組みなど、独自の脱炭素化を進めています。

佐井村が脱炭素先行地域になるまでの歩み

佐井村が脱炭素先行地域になるまでの歩み
出典:環境省

佐井村は、地域新電力を通じた電力の地産地消に向けた検討を進めてきました。

佐井村における脱炭素の主な取り組み
  • 令和3年4月:青森県内初となる地域新電力「株式会社さいエナジー」を設立
  • 令和3年7月:村内の小規模河川でのマイクロ水力発電可能性調査に着手
  • 令和3年10月:「ゼロカーボンシティさい」を宣言
  • 令和5年3月:「佐井村再生可能エネルギー基本戦略」を策定

これらの取り組みを経て、令和5年4月28日には環境省の脱炭素先行地域(第3回)に選ばれています。重点選定モデル「施策間連携」にも選定されました。

脱炭素先行地域に選定された佐井村の計画
  • 計画の名称
    日本で最も小さくかわいい漁村のゼロカーボンへの挑戦~漁業を基軸とした地域循環型プラットフォーム~
  • 計画の内容
    村内全域(9集落)を対象に、住宅・公共施設への太陽光発電導入や、海岸漂着ごみを活用した樹脂燃料ボイラーの漁協加工場への導入などを進め、漁業を基軸とした脱炭素と地域経済循環を目指す取り組みです。
    佐井村が主体となって事業を進め、共同提案者である佐井村漁業協同組合や株式会社さいエナジーが、漁業関連施設の脱炭素化や電力供給を担う体制がとられています。

施策間連携とは

関係省庁の支援策を組み合わせて脱炭素事業と連動させ、住民の暮らしの質の向上や農林水産業などの地域経済への波及効果を狙う重点選定モデルです。脱炭素先行地域の第3回選定では、このような相乗効果が期待できる提案として、佐井村を含む5件が選ばれています。

出典:佐井村脱炭素先行地域づくり事業補助金について
出典:日本で最も小さくかわいい漁村のゼロカーボンへの挑戦

佐井村が進める脱炭素の具体的な取り組み

佐井村が進める脱炭素の具体的な取り組み
出典:環境省

佐井村の脱炭素まちづくりでは、村内全域(9集落)を対象に、漁業を基軸とした取り組みが進められています。

出典:日本で最も小さくかわいい漁村のゼロカーボンへの挑戦

海岸漂着ごみを燃料に変える「イーヴォル」導入

佐井村の海岸には、毎年10トンを超えるプラスチック系のごみが漂着しています。これまでは約70km離れた処理施設まで運搬し、処分するしかありませんでした。

佐井村はこの漂着ごみから樹脂燃料をつくり、無圧式開放型ボイラー「イーヴォル」で燃焼させて温水・温風・蒸気をつくる設備を、佐井村漁業協同組合の加工場に導入します。

これまで重油ボイラーに頼っていた熱源を切り替えることで化石燃料からの脱却を図るとともに、加工場の屋根には太陽光発電と蓄電池も設置し、電力・熱の両面で再エネ100%の加工場を目指します。

処分するしかなかった漂着ごみが燃料に生まれ変わることで、加工品を「カーボンフリー水産品」としてブランド化し、新たな販路開拓につなげる狙いもあります。

太陽光発電・蓄電池の導入とデジタル通貨によるポイント還元

佐井村では、住宅・事業所・公共施設を対象に、太陽光発電と蓄電池をPPA方式で導入します。

指定避難所にはV2Hを設置し、災害で道路が寸断され集落が孤立した場合でも、公用車のEVから電力を供給できる体制を整えます。

屋根の形状や日照条件で太陽光を導入できない住宅には、地域新電力「さいエナジー」の再エネメニューへの切り替えを促します。

全世帯に配布済みのタブレット端末「AI(愛)さいボード」を使った買い物支援システムと連動させ、再エネに切り替えた家庭には電気使用量に応じてデジタル通貨のポイントを還元し、村内での消費につなげる仕組みも構築します。

藻場再生とカーボン・オフセットで進めるブルーカーボン

佐井村の沿岸では、ウニの増えすぎなどが原因で昆布などの藻場が衰退する「磯焼け」が進んでいます。藻場は水産資源を育てるだけでなく、海藻がCO₂を吸収する「ブルーカーボン」としての役割も担っています。

佐井村漁業協同組合が中心となり、磯焼けの一因であるウニを除去し、そのウニを使った移植放流など藻場の再生活動を進めます。

財源には、村を訪れる観光客向けに宿泊・食事・観光船とセットで提供する「カーボン・オフセット」プランの収益を充てる計画です。

佐井村の脱炭素まちづくりまとめ

佐井村の脱炭素まちづくりまとめ
出典:佐井村

佐井村の脱炭素の取り組みでは、厄介者だった海岸漂着ごみを、漁協加工場の燃料という資源に変えています。処分にコストがかかっていたごみが化石燃料の代替になり、さらに水産品のブランド価値向上にもつながるという、一つの取り組みが複数の課題解決を兼ねる構造になっています。

デジタル通貨によるポイント還元や藻場再生とカーボン・オフセットの組み合わせも同様です。脱炭素そのものを目的化せず、村の暮らしや漁業の持続性と結びつけている点に、佐井村らしさが表れています。

将来的には、波力発電や大規模蓄電池を組み込んだ「ハイブリッド漁港」の構想も描かれており、漁業という基幹産業と脱炭素化を長期的に一体化させていく方針です。

監修者

エコ×エネの相談窓口コラムでは「満足いただける情報、損をしない業者選びをお届けすること」を大切にしています。

太陽光発電や蓄電池の導入では、初期費用の高さに目が行きがちですが、実際にお得になるかどうかは補助金の活用度合いや、その後の光熱費削減効果まで含めて見る必要があります。エコ×エネの相談窓口では、そうした費用対効果の視点から、メーカー比較や価格相場の情報をお届けしています。

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【保有資格】太陽光発電アドバイザー(2025年取得)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(2021年取得)

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