西粟倉村は岡山県の最北東にある村です。因幡街道沿いの谷を吉野川が流れ、村の面積の9割以上を森林が占めています。
周辺の市町村が合併を進める中、西粟倉村は一度も他の自治体と合併せず、単独の村として存続し続けています。
環境問題にも積極的に向き合っており、平成25年には環境モデル都市に選定され、令和4年には環境省の脱炭素先行地域にも第1回で選ばれました。
本記事では、岡山県西粟倉村が進める脱炭素先行地域の取り組み内容を紹介します。
西粟倉村が脱炭素先行地域になるまでの歩み

西粟倉村は平成25年、二酸化炭素削減の高い目標を掲げて先駆的な取り組みに挑戦する自治体を国が選ぶ「環境モデル都市」に選定されました。以来、村の面積の9割以上を占める森林を生かした「百年の森林構想」を軸に、小水力発電や木質バイオマスなど再生可能エネルギーの導入を進めています。
令和3年9月には「ゼロカーボンシティ宣言」を表明し、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す方針を明確にしています。
令和4年4月26日、西粟倉村は株式会社中国銀行・株式会社エックス都市研究所・テクノ矢崎株式会社との共同提案により、環境省の第1回脱炭素先行地域に選定されました。
- 計画の名称
「2050“生きるを楽しむ”むらまるごと脱炭素先行地域づくり事業」 - 計画の内容
公共施設・観光施設・住宅エリアなど村内の複数エリアを対象に、2030年度までの電力消費に伴う二酸化炭素排出量実質ゼロを掲げています。
出典:脱炭素先行地域(第1回)の選定証が授与されました!
出典:2050“生きるを楽しむ”むらまるごと脱炭素先行地域づくり事業
西粟倉村が進める脱炭素の具体的な取り組み

西粟倉村の脱炭素に向けた取り組みは、公共施設・観光施設・住宅エリアなどを対象に、電力・熱・移動の3分野にまたがる4つの柱で構成されています。
出典:2050“生きるを楽しむ”むらまるごと脱炭素先行地域づくり事業
太陽光発電・蓄電池による村全域の再エネ導入
西粟倉村では、あわくら会館や小学校・中学校、保育所などの公共施設、道の駅「あわくらんど」などの観光施設の屋根に太陽光発電設備を設置しています。一部の施設には蓄電池も併せて導入し、電力の安定供給を図っています。
しごと・くらし応援住宅や村営住宅などの住宅エリアでは、PPA方式を活用して初期費用をかけずに太陽光発電・蓄電池を導入する計画になっています。
既存の小水力発電所や木質バイオマス発電施設と組み合わせ、村内で使う電力を村内の再生可能エネルギーでまかなう体制を広げています。
地域新電力によるエネルギーの地産地消
西粟倉村は令和4年度中に地域新電力を設立し、村内で発電した再エネ電力を村内の家庭・事業者へ供給する体制を整えました。
村外の電力会社に払っていた電気料金を村内の新電力会社に集約することで、これまで村外に流出していたお金を村内に残し、地域内の雇用や新たな事業の創出に活用するのが狙いです。
バイオマスボイラーによる熱利用の脱炭素化
西粟倉村は、木材の土場で発生する樹皮(バーク)を廃棄せずに、木質チップの乾燥用燃料として活用するバイオマスボイラーを導入しています。
従来は産業廃棄物として処分費用がかかっていたバークの燃料への転用により、化石燃料の使用量を減らすと同時に、山側への収益還元にもつなげています。
EV・グリーンスローモビリティによる移動の脱炭素化
公共交通機関が少ない西粟倉村では自家用車への依存度が高く、運輸部門の二酸化炭素排出量も課題となっています。
村では公用車のEV化を進めるとともに、低速で走行する小型車両「グリーンスローモビリティ」の導入台数を年々増やしています。
高齢化が進む山間部の移動手段確保と脱炭素の両立を図る取り組みとなっています。
西粟倉村の脱炭素まちづくりまとめ

西粟倉村の脱炭素先行地域づくりは、平成20年の「百年の森林構想」から続く村独自の資源循環の考え方を土台にしている点に特色があります。
再生可能エネルギーの導入や地域新電力会社の設立、樹皮の燃料化といった一つひとつの取り組みが、村内で生まれた価値をできるだけ村内で循環させるという共通の姿勢でつながっています。
山林が9割以上を占め、平成の大合併でも単独自治体を選んだ西粟倉村の歩みは、資源に乏しいと思われがちな中山間地域にも脱炭素を軸にした地域経済のつくり方があることを示しています。

