邑南町は、島根県のほぼ中央、中国山地に位置する中山間の町です。平成16年に瑞穂町・羽須美村・石見町が合併して誕生し、令和8年6月時点での人口は約9,200人です。
「A級グルメ立町構想」や「日本一の子育て村構想」など、独自の発想でまちづくりを進めてきた邑南町は、令和4年に環境省の第1回脱炭素先行地域にも選ばれています。
本記事では、邑南町が進める脱炭素先行地域事業の取り組み内容を紹介します。
出典:邑南町
邑南町が脱炭素先行地域になるまでの歩み

邑南町は令和3年3月、「邑南町ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。翌年1月には「邑南町再エネ最大限導入計画」を策定し、町内で再生可能エネルギーを最大限に活用する方針を示しています。
2050年までに二酸化炭素の排出を全体として実質ゼロとする社会を実現し、環境と経済を両立した住みよい邑南町を目指すという内容の宣言です。
令和4年2月には地域新電力会社「おおなんきらりエネルギー株式会社」を設立しました。この会社を共同提案者として、令和4年4月26日、邑南町は環境省の第1回脱炭素先行地域に選定されています。
- 計画の名称
再生可能エネルギーで輝く「おおなん成長戦略」 - 計画の内容
邑南町内をはじめ島根県内で発電された再エネ電力を調達し、エネルギーの地産地消に取り組む計画です。PPAモデルを活用した太陽光パネルの無償設置や蓄電池の普及により、公共施設・事業所・一般家庭・農地での自家消費を促進し、環境と経済を両立した脱炭素地域の実現を目指しています。
出典:「邑南町ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました
出典:邑南町が第1回の脱炭素先行地域に選定されました
出典:再生可能エネルギーで輝く「おおなん成長戦略」
邑南町が進める脱炭素の具体的な取り組み

邑南町の脱炭素先行地域事業の取り組みは、電力・熱・農業の複数分野にまたがる4つの柱で構成されています。
PPAを活用した太陽光発電・蓄電池の導入
邑南町では、公共施設・事業所・一般家庭・農地を対象に、PPAモデルを活用した太陽光パネル・蓄電池の無償設置を進めています。屋根や敷地の所有者が、初期費用を負担せずに太陽光発電と蓄電池を導入できる仕組みです。
太陽光発電で得た電力はその場で自家消費し、電気料金の削減と二酸化炭素排出削減を同時に図っています。
地域新電力によるエネルギーの地産地消
邑南町内や島根県内で発電された再エネ電力は、地域新電力会社「おおなんきらりエネルギー」が一括して調達し、邑南町を中心に供給しています。
これまで大手電力会社に支払っていた電気料金を町内の会社に集約する形となり、地域内でお金が循環する構造ができています。
エネルギーの地産地消で集まった収益は、地域課題の解決に向けた取り組みにも活用される予定です。
地中熱を活用した融雪・空調設備の導入
再整備が進む道の駅瑞穂では、地中熱を活用した融雪・空調設備の導入を計画しています。
地中の温度は年間を通じて安定しているため、冬季の融雪や夏季の空調に地中熱を利用すれば、灯油や電気による従来の熱源を減らせます。
ソーラーシェアリングによる食のサプライチェーンの脱炭素化
邑南町は、農地の上部に太陽光パネルを設置しながら農業を続けるソーラーシェアリングを推進しています。
ハウス栽培の加温などに再エネ電力を活用し、農産物の生産から集出荷、産直施設での販売に至るまでの過程を脱炭素化する狙いです。
「A級グルメ立町構想」で培ってきた地元食材を軸にした地域振興と、エネルギーの地産地消を組み合わせた取り組みといえます。
邑南町の脱炭素まちづくりまとめ

邑南町の脱炭素先行地域づくりは、地域新電力会社を軸にエネルギーの経済的価値を町内に循環させ、その循環を農業・食という町の基幹産業にまでつなげている点に特色があります。
「A級グルメ立町構想」や「日本一の子育て村構想」など、逆境をむしろ武器に変える発想でまちづくりに取り組んできた邑南町にとって、脱炭素先行地域づくりもまた、過疎に悩む中山間地域が自らの手で経済循環をつくり出す一つの挑戦といえます。


