梼原町は、高知県西部の愛媛県境に位置する山村です。総面積の約91%を森林が占め、四国カルストや四万十川の源流域を望む自然環境が広がっています。
また、世界的建築家の隈研吾氏がデザインした木造建築群も見どころとなっており、「雲の上のまち」として親しまれています。
本記事では、梼原町が高知県で初めて脱炭素先行地域に選定されるまでの歩みと、脱炭素まちづくりの具体的な取り組みを紹介します。
梼原町が脱炭素先行地域になるまでの歩み

梼原町は、森の資源が循環する低炭素社会の実現を目指し、一貫して取り組みを積み重ねています。
- 平成11年:四国カルストで町営の風力発電事業を開始
- 平成20年:木質ペレット工場が稼働
- 平成21年:内閣府から環境モデル都市の認定を受ける
- 令和元年:木質ペレットの品質認定でAランクを取得
これらの取り組みが評価され、令和4年4月には環境省の脱炭素先行地域(第1回)に選定されました。
- 計画の名称
「脱炭素は土佐の山間より~ゆすはら脱炭素の道~」 - 計画の内容
森林資源を生かした木質バイオマス発電や地域マイクログリッドの整備を通じて、林業振興と観光振興の両立を目指す取り組みです。
出典:脱炭素先行地域(第1回)計画提案書「脱炭素は土佐の山間より~ゆすはら脱炭素の道~」(梼原町)
出典:脱炭素先行地域選定結果(第1回)について(環境省)
出典:四国カルストにおける風力発電基本構想(案)(こうち再生可能エネルギー事業化検討協議会)
梼原町の脱炭素に向けた具体的な取り組み

梼原町の脱炭素先行地域計画は、林業と観光という町の基幹産業を軸に据えている点が特徴です。木質バイオマス発電を中心に、送電網の制約を乗り越える体制づくりや高齢者の暮らしを支えるEV活用など、複数の取り組みが一体で進められています。
出典:脱炭素先行地域(第1回)計画提案書「脱炭素は土佐の山間より~ゆすはら脱炭素の道~」(梼原町)
出典:森林資源の循環利用を目指す町「梼原町」(こうちの脱炭素スタートサイト「こっから。」)
「雲の上のホテル」への木質バイオマス発電導入
建築家隈研吾氏が設計を手がけた観光施設「雲の上のホテル」と、太郎川公園内の温泉・プール施設の間に、木質バイオマス発電設備の建設を計画しています。
発電に伴う熱もお湯に換えて温泉やプールの給湯に活用できるため、化石燃料に頼ってきた熱利用を町内資源に置き換えられます。
送電網の制約を乗り越える地域マイクログリッド
梼原町には四国電力送配電の送電網の空き容量がなく、高圧の再生可能エネルギー設備を新たに系統へ接続することが困難な状況です。
木質バイオマス発電の電力を対象施設へ直接届けるために、自営線を敷設して地域マイクログリッドの整備を進めています。
送電網の制約という地域課題を、自前の送配電網づくりへと転換した取り組みです。
地域エネルギー公社を核にした資金と資源の循環
町が中心となって設立を進めているのが、地域内の再エネ電力を購入し施設や家庭へ供給する「地域エネルギー公社」です。
四国カルストの風力発電は令和5年から新型の風車1基での運転に切り替わっており、公社を通じた電力供給の中核として位置づけられる見込みです。
EV車両の導入による高齢者の移動支援と防災力強化
公用車や集落活動センターの活動車両、NPO法人が担う公共交通空白地有償運送の車両などをEV化し、災害時には避難所等への電力供給にも活用する予定です。
高齢化が進む町内では、自動車での移動に頼らざるを得ない高齢者の日常の足を支えると同時に、停電時の防災力強化にもつなげる位置づけとなっています。
梼原町の脱炭素まちづくりまとめ

梼原町の脱炭素まちづくりの特徴は、基幹産業である林業の課題解決と隈研吾建築が集まる観光資源を、脱炭素という一つの戦略の中に重ねている点です。
木質バイオマス発電できめ細かく地域の森を手入れしながら、その熱と電気を「雲の上のホテル」など町を訪れる人が集まる場所へ還元する取り組みは、過疎化が進む山村ならではの資源の活かし方を示しています。
送電網の制約すらも自前のマイクログリッドづくりの契機に変えた梼原町の挑戦は、これから脱炭素に取り組むほかの中山間地域にとっても参考になるでしょう。


