福井県池田町は、町全域が特別豪雪地帯に指定されている山あいの町です。冬には1メートルを超える雪が積もることも珍しくありません。
この雪や水資源といった地域の特性を、脱炭素につなげる試みが進んでいます。
本記事では、池田町の脱炭素先行地域としての具体的な施策を紹介します。
池田町ゼロカーボンシティ宣言と脱炭素先行地域への選定

池田町は令和4年4月、「池田町ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。
「2050年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロを達成する」という国の目標より10年前倒しし、2040年までの脱炭素の実現を目指す内容です。
池田町ゼロカーボンシティ宣言を土台として、町は令和5年2月に「脱炭素実現ビジョン」を策定し、小水力発電・バイオマス熱利用・太陽光発電など、町内で導入可能性の高い再生可能エネルギーを整理しました。
令和7年5月9日には、環境省の「脱炭素先行地域」に選定されています。全国から7件が選ばれた第6回選定のひとつであり、福井県内では敦賀市に次いで2例目の選定です。
- 計画の名称
「脱炭素化困難な豪雪地帯における県と町の連携による地域脱炭素実現」 - 計画の内容
豪雪地帯という条件不利地域ならではの課題を、雪と水の地域資源に転換する取り組みです。池田町が主体となって事業を進め、共同提案者である福井県が人的支援や設備補助などの伴走支援を行う体制がとられています。
出典:「ゼロカーボンシティ宣言」を行います
出典:池田町が脱炭素先行地域に選定されました
池田町が進める脱炭素の具体的な取り組み

池田町の脱炭素先行地域事業は、「融雪型太陽光発電による住宅への電力供給」「農地を生かした太陽光発電と特産品栽培」「水資源を生かした小水力発電」という3つの柱で構成されています。
融雪型太陽光発電と地域新電力による住宅への電力供給
池田町では、地域振興公社「まちUPいけだ」の子会社として、新たに「まちUPエナジー」が設立されました。まちUPエナジーが担うのが、融雪機能を備えた太陽光発電設備(約1,200kW)を一般住宅の屋根に導入するPPA事業です。
まちUPエナジーは、太陽光発電設備の導入状況などを踏まえた再エネメニューを組み、町内へ電力を供給する地域新電力としての役割も担う予定です。
遊休農地の垂直型太陽光発電と特産品栽培の両立
池田町の脱炭素先行地域事業では、遊休農地に垂直型の太陽光発電設備(約900kW)を導入する計画も進んでいます。
パネルを地面に垂直に立てて設置する太陽光発電設備を活用すれば、パネルの下でもそば・よもぎといった地域特産品の栽培を続けることが可能です。
美しい農業景観を保ちながらエネルギーの自給を進めつつ、特産品の商品開発による農業の収益性向上にもつなげる狙いがあります。
豊富な水資源を生かした小水力発電
池田町は、山あいの地形を生かした豊富な水資源にも恵まれています。
池田町の脱炭素先行地域事業では、町と「まちUPいけだ」が主体となって特別目的会社(SPC)を設立し、小水力発電設備(約450kW)を導入する計画が進められています。
池田町の脱炭素まちづくりまとめ

出典:池田町
雪深い山あいの小さな町が、国より10年早い2040年の脱炭素実現を掲げているという事実そのものに、池田町の本気度が表れています。
屋根の雪下ろしという昔からの重労働を、融雪型太陽光パネルで再生可能エネルギーの導入に変える発想の転換には、豪雪地帯ならではの知恵が詰まっているといえるでしょう。
また、福井銀行・大学・地元企業まで巻き込んだ体制づくりは、小規模自治体が単独では実現しにくい取り組みを、地域ぐるみで動かす一つのモデルとなっています。


