仙台市は、平成元年に東北初の政令指定都市となった、人口100万人を超える東北の中枢都市です。伊達政宗の城下町として栄えて以来「杜の都」と呼ばれ、東日本大震災の被災経験から「防災環境都市」を掲げています。
仙台市の脱炭素の取り組みについては、市民の日常動線という切り口が独自性の核です。「働く・集う場所」(定禅寺通エリア)「暮らす場所」(泉パークタウンエリア)「学ぶ・楽しむ場所」(東部沿岸エリア)という3つのシンボリックなエリアを設定し、それぞれ性格の異なる施策を展開しています。
仙台市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

仙台市は、東日本大震災でのエネルギー途絶の経験を踏まえ、防災と脱炭素を組み合わせたまちづくりを進めてきました。
- 平成24年度:全ての指定避難所等199か所に太陽光発電と蓄電池を組み合わせた「防災対応型太陽光発電システム」の導入を開始(令和4年度に完了)
- 令和3年1月:宮城県内の市町村で初めて「ゼロカーボンシティ」を宣言
- 令和4年9月:製品プラスチック一括回収・再商品化計画で全国初となる環境大臣・経済産業大臣の認定を取得
- 令和5年4月:市内全域で製品プラスチックの一括回収を開始
これらの取り組みを経て、令和5年11月7日には環境省の脱炭素先行地域(第4回)に選ばれています。重点選定モデル「施策間連携」「生物多様性の保全、資源循環との統合的な取組」にも選定されました。
- 計画の名称
109万市民の”日常”を脱炭素化~「働く人」「暮らす人」「訪れる人」が豊かな時間を過ごせる”新たな杜の都”~ - 計画の内容
定禅寺通エリア・泉パークタウンエリア・東部沿岸エリアの3エリアと、太陽光発電を供給する2つのエネルギー供給エリアを対象に、既築ビル・既築住宅の脱炭素リノベーションや都市バイオマス資源の活用などを進め、市民の日常の脱炭素化と地域課題の解決を目指す取り組みです。
仙台市が主体となって事業を進め、共同提案者である東北電力株式会社や東北大学など14者が、電力供給や技術協力、需要家との合意形成を担う体制がとられています。
出典:脱炭素先行地域
出典:109万市民の”日常”を脱炭素化~「働く人」「暮らす人」「訪れる人」が豊かな時間を過ごせる”新たな杜の都”~
仙台市が進める脱炭素の具体的な取り組み

仙台市の脱炭素まちづくりでは、定禅寺通・泉パークタウン・東部沿岸の3エリアを対象に、市民の日常動線に沿った取り組みが進められています。
出典:109万市民の”日常”を脱炭素化~「働く人」「暮らす人」「訪れる人」が豊かな時間を過ごせる”新たな杜の都”~
定禅寺通エリアの既築ビル脱炭素リノベーション
定禅寺通エリアでは、築30年から50年ほど経過した個人所有の中小規模ビルを主な対象に据え、建築士や金融機関でつくる「ビルの脱炭素リノベーション支援チーム」を設けました。
断熱改修や高効率設備への更新にかかる技術相談や資金調達を、支援チームが一括で支援します。
泉パークタウンエリアの住宅太陽光と電力需給の最適化
泉パークタウンエリアは、約1万世帯が暮らす国内最大級の民間開発ニュータウンです。すでに分譲中の新規住区では、電力需給に応じて家庭の蓄電池等を遠隔制御するDR(デマンドレスポンス)・VPP(バーチャルパワープラント)の実証が進んでいます。
仙台市はこの実証を隣接する既存の住宅地(紫山3・4丁目)にも広げ、既築住宅を対象に太陽光発電・蓄電池・HEMSの導入を進めます。
東北の気候に合わせた独自基準の断熱改修も組み合わせ、電力の脱炭素化と暮らしの快適性向上の両方を目指します。
生ごみと剪定枝を資源に変える都市バイオマス活用
定禅寺通エリアの飲食店から出る事業系生ごみと、街路樹の剪定枝は、これまでそれぞれ別々に処理されてきました。これらをバイオマス発電の燃料として活用し、電力に変える予定です。
都市部で発生する廃棄物をエネルギーと製品で地域に還元する取り組みです。
東部沿岸エリアの太陽光発電とEVモビリティ
東日本大震災の津波で被災した東部沿岸エリアには、震災遺構荒浜小学校や南蒲生浄化センターといった観光・学習施設が点在しています。
仙台市はこれらの施設や周辺の未利用地に太陽光発電を導入するほか、被災した大規模太陽光発電設備のパネルをリユースする実証にも取り組みます。
訪れる人向けにはEVカーシェアを導入し、市営バスや公用車、みやぎ生協の配送トラックもEV化を進め、移動の脱炭素化を後押しします。
仙台市の脱炭素まちづくりまとめ

仙台市が目指しているのは、脱炭素だけを目的としたまちづくりではありません。「働く・集う」「暮らす」「学ぶ・楽しむ」という市民の日常の質を高めながら、環境と共生し、安全・安心で、豊かさを実感できる「新たな杜の都」を実現することです。
その背景にあるのが、仙台市が掲げる“The Greenest City”というまちづくりの方向性と、東日本大震災の経験を生かした「防災環境都市」の考え方です。脱炭素を進めることで、環境面だけでなく、防災力や都市の魅力、地域経済の発展にもつなげようとしています。
さらに、脱炭素先行地域で生まれた成果を市内の他地域へ広げ、2030年以降の全市展開につなげることも視野に入れています。市民の意識や行動の変化、地元事業者の技術・ノウハウの蓄積を通じて、2050年のゼロカーボン社会を市全体で実現していくことが、仙台市の目指す脱炭素まちづくりです。


