岩手県陸前高田市は、東日本大震災の津波による甚大な被害からの復興を通じて、脱炭素と地域産業の振興を両立させるまちづくりを進めています。
令和6年には環境省の脱炭素先行地域に選定され、被災跡地でのソーラーシェアリングや小水力発電など複数の取り組みが進行中です。
本記事では、陸前高田市が目指す脱炭素社会に向けた具体的な取り組みを紹介します。
陸前高田市における脱炭素先行地域選定の経緯と目標

東日本大震災の津波で市街地の大部分が被災した陸前高田市は、復興のまちづくりを進める中で、令和元年7月に「SDGs未来都市」に岩手県内で初めて選定されました。
その後、震災跡地の活用や地域産業の振興を軸とした脱炭素の取り組みを強化し、環境省の脱炭素先行地域(第5回)に、岩手県や陸前高田しみんエネルギー(株)をはじめとする共同提案者23者とともに応募しています。
令和6年9月27日、全国46件の計画提案のうち9件が脱炭素先行地域として決定し、陸前高田市もその一つに入りました。岩手県内では5件目です。
<計画名称>
脱炭素と資源循環で実現する農林水産業振興~復興の先の創造的産業振興モデル~
令和7年度から令和11年度にかけて、中心市街地エリアや横田地区などを対象に、農林水産業の振興と脱炭素を両立させる取り組みが進められています。
出典:脱炭素先行地域への選定について
出典:陸前高田市脱炭素先行地域づくり事業
陸前高田市の具体的な取り組み

陸前高田市では、震災跡地の活用や地域資源の循環を軸とした脱炭素の取り組みが進んでいます。
中心市街地の被災跡地を活用したソーラーシェアリング
陸前高田市の中心市街地エリアでは、津波の被害で農地としての回復が難しくなっていた被災跡地を活用し、果樹栽培に最適化した「営農“強化”型太陽光発電設備(ソーラーシェアリング)」を導入する計画です。
- 太陽光パネルを雨よけとして活用し、ワイヤーに枝を誘引する方法を取り入れることで、袋掛け作業やブドウ棚への投資を不要にし、営農部分の初期費用を抑える
- 鉢植え状の容器で根の広がりを制限しながら育てるポット式根域制限栽培を採用し、津波被災跡地などこれまで活用が難しかった未利用地を果樹園として活かす
導入する太陽光発電設備の規模は8,330kWです。震災跡地の農地としての価値と再生可能エネルギーの導入を両立させる試みとして注目されています。
横田地区の小水力発電とマイクログリッド構築
森林・水資源活用モデルエリアに位置付けられている横田地区では、197kWの小水力発電の導入を進めています。地域の水資源を活かした発電により、地区内の再生可能エネルギーの供給力を高めることが狙いです。
また、指定避難所となっている中心部の民間施設と災害時の連携協定を締結し、企業版ふるさと納税で寄付された大型蓄電池を活用した地域マイクログリッドを構築する計画もあります。
メタン発酵バイオガス発電設備の導入
陸前高田市では、下水汚泥・生ごみ由来のメタン発酵バイオガスによる発電設備(49kW)を導入する計画が進められています。また、発酵の過程で生じる液肥を地域の稲作農家等へ供給する体制も整備中です。
これまで廃棄されていた食品残渣や下水汚泥を発電と液肥の原料として活用すれば、電気と肥料資源を地域内で循環させられるため、行政の処理コストや農家が負担している肥料費の低減につながります。
電気保安人材の育成・確保
陸前高田市は、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー設備の増加に伴い、その保守点検を担う電気保安人材の不足を課題としています。
この課題に対応するため、地域新電力の陸前高田しみんエネルギー(株)や一般社団法人東北電気管理技術者協会岩手県支部等と連携し、電気主任技術者などの資格取得を支援するモデルの構築を進めています。
資格を取得した人材が実務経験を積める受け皿として、地域新電力内に保安部門を新設する計画もあり、資格取得から実務経験の確保までを一体的に支援する体制を整えています。
陸前高田市の脱炭素まちづくりまとめ

陸前高田市では、東日本大震災の津波被災跡地を、農林水産業と再生可能エネルギーを組み合わせた新たな産業振興の場として活用しています。
ソーラーシェアリングや小水力発電・バイオガス発電、電気保安人材の育成など、地域資源の循環を軸とした取り組みが今後も広がっていく見通しです。
令和11年度までの計画期間を通じて、震災復興の先を見据えた創造的な産業振興のモデルとなっていくことが期待されています。


