北海道石狩市は、札幌市の北側に隣接する自治体です。
日本海に面した石狩湾新港地域は、770社以上が集まる道内最大級の産業拠点であり、風力発電やバイオマス発電などの再エネ発電も大規模に集積しています。産業と再エネが同一エリアに混在する、国内でも珍しい地域です。
産業部門のCO₂排出量が増加する中、産業と再エネを組み合わせた取り組みが評価され、令和4年には環境省の第1回脱炭素先行地域に選定されました。
石狩湾新港地域に設定した「REゾーン」を軸に、データセンターなどの電力多消費産業と再エネを結びつけ、脱炭素と産業振興を両立させる取り組みが進められています。
石狩市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

石狩市は、産業部門のCO₂排出量の増加と、道内最大の産業拠点である石狩湾新港地域の停電リスクという課題に向き合う中で、再エネを活用した地域振興の検討を重ねてきました。
- 令和2年12月:「ゼロカーボンシティ」を表明
- 令和4年4月:太陽光発電や水素製造・燃料電池を組み合わせた「厚田マイクログリッド」の稼働を開始
- 令和6年3月:東急不動産株式会社と「再エネ利用による持続可能なまちづくりに係る協定書」を締結
これらの取り組みを経て、令和4年4月26日には環境省の脱炭素先行地域(第1回)に選ばれています。
- 計画の名称
再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン - 計画の内容
石狩湾新港地域内エリア(REゾーン等)と花川北地区の公共施設群を対象に、地域に集積する再エネをデータセンターなどの産業施設や公共施設に供給し、産業の脱炭素化と地域振興を同時に目指す取り組みです。
石狩市が主体となって事業を進め、共同提案者である東急不動産株式会社が地域エネルギー会社の運営やREゾーンへの再エネ供給を担います。
出典:ゼロカーボンシティの達成に向けた石狩市の取り組み
出典:再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン
石狩市が進める脱炭素の具体的な取り組み

石狩市では、石狩湾新港地域内のREゾーンと花川北地区の公共施設群を対象に、再エネと産業振興を両立させる取り組みが進められています。
データセンターへの再エネ供給と「REゾーン」の拡大
石狩市は、東急不動産株式会社と共同で設立した石狩地域エネルギー合同会社を通じて、石狩湾新港地域内に太陽光発電やバイオマス発電の設備を整備し、地域内のデータセンターへ再エネを供給しています。
京セラコミュニケーションシステム株式会社のデータセンターは、使用電力をすべて再エネでまかなう「ゼロエミッション・データセンター」としてすでに稼働中です。
今後は新たなデータセンターや商業施設の立地も見込んでおり、供給エリアを段階的に拡大していく計画になっています。
公共施設群のマイクログリッド構築
花川北地区に集まる石狩市役所本庁舎・図書館・学校給食センターなど5つの公共施設では、それぞれの屋根に太陽光発電設備を導入し、自家消費を進めています。
これらの施設は災害時の対応拠点や福祉避難所にも指定されており、再エネ導入とあわせて災害時の電力確保にもつなげる狙いがあります。
洋上風力発電の活用と水素サプライチェーンの検討
石狩湾新港沖では、日本海側特有の風況を生かした洋上風力発電がすでに商業運転を開始しており、道内でも有数の再エネ集積地となっています。
石狩市は、洋上風力発電の余剰電力を活用したグリーン水素の製造を検討中です。水素を「作る・運ぶ・使う」サプライチェーンの構築に向けて、札幌市との協議を進めています。
将来的には、地域で製造した水素を燃料電池トラックやドローンなど物流分野で活用することも視野に入れています。
公用車のEV化・防災活用
石狩市は公用車を電気自動車へ切り替え、平常時にはイベント等での展示を通じて普及啓発に活用しています。
EV1台あたりスマートフォン約2,000台分の充電能力を確保できる見込みで、運輸部門の脱炭素化と防災力の強化を同時に進める取り組みとなっています。
石狩市の脱炭素まちづくりまとめ

石狩湾新港地域で再エネと産業が結びつく体制は、石狩市にとって最初から順風だったわけではありません。当初計画していた特定送配電事業は電力卸市場の高騰で実装が難しくなり、令和6年に東急不動産株式会社との連携協定によってスキームを組み直した経緯があります。
このような軌道修正を経てもREゾーンの構想が続いているのは、電力を確実に使い切るデータセンターが地域内に存在し続けているためです。
今後は石狩市中心核の公共施設や運輸部門にも取り組みを拡大し、2050年のゼロカーボンシティ実現に向けて、再エネの供給エリアを段階的に広げていく方針です。


