苫小牧市(北海道)は余剰電力で産業と暮らしをつなぐ!ダブルポートシティが挑む新たなPPAモデル

苫小牧市(北海道)は余剰電力で産業と暮らしをつなぐ!ダブルポートシティが挑む新たなPPAモデル 脱炭素先行地域の紹介

北日本最大の国際拠点港湾「苫小牧港」と北海道の空の玄関「新千歳空港」のダブルポートを擁する苫小牧市は、製紙・自動車部品・石油精製など約800社が集積する北海道最大の工業都市です。

CO₂排出量の約70%を産業部門が占め、脱炭素化には産業部門の対応が求められています。西部工業基地の企業が導入するPPA方式の太陽光発電については、休業日に発生する余剰電力の使い道がなく捨てられていたため、隣接する勇払市街地にこの電力を安価で供給する体制を構築しました。

産業部門から出る休日の余剰電力を民生部門に供給するという、全国的にも珍しいモデルが評価され、令和5年には第4回脱炭素先行地域に選定されています。

苫小牧市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

苫小牧市が脱炭素先行地域になるまでの歩み
出典:環境省

産業部門から排出されるCO₂の多さを課題としていた苫小牧市では、脱炭素に向けてこれまでさまざまな取り組みを重ねてきました。

苫小牧市における脱炭素の主な取り組み
  • 平成24年:国内初となるCCS大規模実証試験事業に着手
  • 令和元年11月:CCS大規模実証試験事業の目標であった年間30万トン圧入を達成
  • 令和3年8月:「ゼロカーボンシティ」を表明
  • 令和4年3月:「苫小牧市再生可能エネルギー基本戦略」を策定
  • 令和5年3月:「苫小牧市第4次環境基本計画~第1期ゼロカーボン推進計画~」を策定

これらの取り組みを経て、令和5年11月7日には環境省の脱炭素先行地域(第4回)に選ばれています。

脱炭素先行地域に選定された苫小牧市の計画
  • 計画の名称
    ダブルポートシティ苫小牧の次世代エネルギー供給拠点形成への挑戦~産業(立地企業)の脱炭素化が民生(市街地)のゼロカーボンと地域振興に資する新たなPPAモデルの構築~
  • 計画の内容
    西部工業基地(港南)エリア・勇払市街地エリア・沼ノ端クリーンセンターエリアの3エリアを対象に、産業施設へのPPA太陽光発電導入と、その休日の余剰電力を勇払市街地に供給する仕組みを構築し、産業部門の脱炭素化を民生部門や地域課題解決に波及させる取り組みです。

出典:地域脱炭素移行・再エネ推進事業計画(脱炭素先行地域事業)
出典:ダブルポートシティ苫小牧の次世代エネルギー供給拠点形成への挑戦

苫小牧市が進める脱炭素の具体的な取り組み

苫小牧市が進める脱炭素の具体的な取り組み
出典:苫小牧市

苫小牧市では、産業部門の脱炭素化を民生部門や地域課題の解決に波及させる取り組みが進められています。

出典:ダブルポートシティ苫小牧の次世代エネルギー供給拠点形成への挑戦

産業部門におけるPPA太陽光発電の導入

西部工業基地には出光興産北海道製油所やトヨタ自動車北海道など多様な企業が集積し、市内のCO₂排出量の大部分をこの地域が占めています。

苫小牧市は西部工業基地内の企業15社を対象に、PPA方式による太陽光発電設備の導入を進めています。

導入予定の再エネ設備は合計15.1MWにのぼり、平日は企業がほぼ全量を自家消費する予定となっています。

休日の余剰電力を勇払市街地に届ける新PPAモデル

一般的なPPA太陽光発電は、企業が休業する土日祝日に発電した電力の使い道がなく、基本的には捨てるしかありません。

苫小牧市は、休日の余剰電力を隣接する勇払市街地に届ける新たなPPAモデルを構築しています。

小売電気事業者が休日の余剰電力を買い取り、勇払市街地の家庭や事業者へ、通常より安価な再エネ電力メニューとして供給する流れです。

地域振興費で解決する勇払市街地の地域課題

勇払市街地は苫小牧発祥の地であり、かつては製紙工場の従業員やその関係者でにぎわっていましたが、工場の洋紙事業撤退を機に人口が急速に減少しました。

ピーク時に5,000人を超えていた人口は、令和4年末には1,769人まで落ち込み、高齢化率も市内平均を大きく上回っています。

診療所も撤退して無医療地域となったこともあり、企業から拠出される地域振興費を財源に、住宅リノベーションへの補助や病院への移送サービス、津波避難路のソーラー街灯整備といった事業を進めています。

CCSと水素で目指す次世代エネルギー拠点

苫小牧市は、国内で唯一CCS大規模実証試験を行った実績を持ち、令和元年には目標であった年間30万トンのCO₂圧入を達成しました。

この経験を土台に、2030年までに年間最大150万トンのCO₂を貯留する先進的CCS事業の実現を目指しています。

沼ノ端クリーンセンターの廃棄物発電を活用したグリーン水素の製造や、ガソリン・航空機燃料の代替となる合成燃料の開発も検討中です。

新千歳空港を活用したSAF(持続可能な航空燃料)のサプライチェーン構築も視野に入れた取り組みとなっています。

苫小牧市の脱炭素まちづくりまとめ

苫小牧市の取り組みの特徴は、CO₂排出量の多くを占める産業部門の脱炭素化を、民生部門や地域課題の解決にまで波及させる発想です。企業の休日に発生していた余剰電力を無駄にせず勇払市街地へ届け、その対価となる地域振興費で人口減少や医療体制の課題に向き合っています。

また、国内で唯一のCCS実証を担ってきた実績を生かし、水素や合成燃料といった次世代エネルギーの拠点形成も同時に進めています。

港と空港という2つの拠点を持つ「ダブルポートシティ・苫小牧市」の挑戦は、産業集積地を抱えるほかの自治体にとっても大きなヒントになるでしょう。

監修者

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【保有資格】太陽光発電アドバイザー(2025年取得)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(2021年取得)

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