秋田県は、全国で最も速いペースで人口減少が進む県です。高齢化率も全国一高く、地域コミュニティの衰退や若者の県外流出が深刻な課題となっています。
風力発電や地熱発電の導入量は全国トップクラスですが、その多くは県外資本です。再エネがもたらす経済効果が地域に十分還元されていません。
また、人口減少に伴い下水道使用料の収入が減り続ける一方、施設の老朽化による更新コストは増加しており、下水道事業の経営悪化が住民負担の増加につながるおそれもあります。
秋田県はこれらの課題に、県内最大の下水処理施設を再生可能エネルギーの供給拠点に変える「再エネ地域マイクログリッド」で向き合おうとしています。
秋田県が脱炭素先行地域になるまでの歩み

秋田県は、下水道使用料収入の減少と施設老朽化による更新コストの増加という課題に向き合う中で、下水処理施設の再エネポテンシャルを生かした地域循環共生圏の構築を検討してきました。
- 令和2年3月:「秋田臨海処理センターリノベーション計画」を国土交通省の下水道リノベーション計画登録制度に登録
- 令和2年度:環境省「脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業」を活用し、秋田臨海処理センターの再生可能エネルギー導入可能性調査を実施
- 令和4年3月:「第2次秋田県地球温暖化対策推進計画(改定版)」を策定し、二酸化炭素排出実質ゼロを表明
これらの取り組みを経て、令和4年4月26日には環境省の脱炭素先行地域(第1回)に選ばれています。
- 計画の名称
流域下水道を核に資源と資産活用で実現する秋田の再エネ地域マイクログリッド - 計画の内容
秋田市向浜地域の公共施設群11施設を対象に、下水処理施設「秋田臨海処理センター」に消化ガス発電・風力発電・太陽光発電を導入し、自営線を通じて再エネ電力を供給する取り組みです。
秋田県が主体となって事業を進め、共同事業者である秋田市が、市有施設への太陽光発電導入や電力需要家としての役割を担う体制がとられています。
出典:向浜地区脱炭素先行地域づくり事業について
出典:流域下水道を核に資源と資産活用で実現する秋田の再エネ地域マイクログリッド
秋田県が進める脱炭素の具体的な取り組み

秋田県の脱炭素まちづくりでは、秋田市向浜地域の公共施設群を対象に、下水処理施設を核とした取り組みが進められています。
出典:流域下水道を核に資源と資産活用で実現する秋田の再エネ地域マイクログリッド
消化ガス・風力・太陽光を組み合わせた再エネ地域マイクログリッド
秋田臨海処理センターは、県内3市4町1村から集約した汚水を処理する、県内最大の下水処理施設です。
秋田県は、下水汚泥の処理過程で発生する消化ガスに加え、敷地内に風力発電・太陽光発電を導入し、蓄電池とエネルギーマネジメントシステムで需給を制御します。
太陽光は日射のない夜間に発電できず、風力は季節や天候で出力が変動しますが、3つの電源を組み合わせれば、冬場の暖房需要が高まる時期や夜間帯にも安定した電力供給を期待できます。
発電した電力は自営線(約5km)を通じて、産業技術センターや県立総合プール、県立野球場など県立施設群に届けられます。
下水汚泥の資源化による農業振興
これまで秋田臨海処理センターでは、下水汚泥を焼却炉で処分してきました。
焼却炉の稼働を2炉から1炉に減らせる見込みであるほか、重油の使用量や汚泥焼却に伴う温室効果ガスの排出も抑えられます。
電気料金削減による下水道事業の経営改善
秋田県は人口減少率が全国で最も高く、汚水量の減少に伴って下水道使用料収入が年々減っています。一方で施設の老朽化に伴う更新コストは増加傾向にあり、下水道事業の経営は厳しさを増しています。
秋田県は再エネ電力の自家消費によって秋田臨海処理センターの電気料金を削減し、その効果を流域市町村の処理場維持管理負担金の低減につなげる予定です。
最終的には住民が支払う下水道使用料の抑制も見込んでいます。
秋田県の脱炭素まちづくりまとめ

秋田県が目指しているのは、再生可能エネルギーを増やしてCO₂を削減するだけの脱炭素ではありません。人口減少や高齢化、地域経済の縮小、下水道事業の経営悪化といった地域課題に対して、地域にある資源やインフラを生かしながら、持続可能な地域をつくっていくことです。
その中心となるのが、下水処理施設を「エネルギーと資源が循環する地域の拠点」へ転換するという考え方です。地域で生み出した再生可能エネルギーを地域で使い、下水汚泥も農業などに活用しながら、脱炭素の取り組みを地域経済や暮らしの維持にもつなげようとしています。
また、再生可能エネルギーの導入によって生まれる経済的な効果を地域に還元し、人口減少が進む中でも地域のインフラを維持できる仕組みを構築することも重要な目標です。脱炭素を環境対策にとどめず、地域資源の循環と経済の好循環を生み出す手段として活用することで、将来にわたって持続できる秋田の地域づくりを目指しています。


