鳥取県中央部に位置する倉吉市は、大山東側に広がる中山間地域を抱えている自治体です。人口減少・高齢化が進むなか、集落機能の維持や農地の活用など、地域が抱える課題への対応が求められています。
そこで倉吉市は、琴浦町・北栄町と連携し、東大山地域を中心とした脱炭素と地域づくりを進めています。令和7年5月には、倉吉市・琴浦町・北栄町の1市2町を中心に、鳥取県や地域企業・農業関係団体などが連携する計画が、環境省の脱炭素先行地域に選定されました。
耕作維持困難農地を活用したどくだみの営農型太陽光発電などにより、地域で生み出したエネルギーを活用し、地域内で経済を循環させる仕組みづくりを目指しています。
倉吉市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

倉吉市は、中山間地域が抱える集落維持や遊休農地の課題に向き合い、琴浦町・北栄町との広域連携による地域新電力の設立を軸に、脱炭素とまちづくりを結び付ける取り組みを重ねてきました。
- 令和4年2月:株式会社鳥取みらい電力を設立
- 令和4年3月:ゼロカーボンシティを表明
- 令和4年度:倉吉市・北栄町・琴浦町・株式会社鳥取銀行が鳥取みらい電力に出資
- 令和6年度:脱炭素先行地域の第5回募集で非選定
- 令和7年4月:倉吉市に脱炭素推進の担当部署を新設
これらの取り組みを経て、令和7年5月9日には環境省の脱炭素先行地域(第6回)に選ばれています。
- 計画の名称
グリーンエネルギーがつむぐ東大山(だいせん)コミュニティ~地域内経済循環システムによる集落・農業の強靭化~ - 計画の内容
倉吉市関金地区・北谷地区・高城地区の一部、北栄町栄地区、琴浦町上郷・古布庄・以西地区からなる東大山中山間地域集落エリアと、県の畜産試験場・園芸試験場・農業大学校など農業関連施設のエリアを対象に、遮光の影響を受けにくいどくだみを栽培する営農型太陽光発電などを導入し、地域内で経済を循環させながら集落と農業の維持・強化を目指す取り組みです。
出典:グリーンエネルギーがつむぐ東大山(だいせん)コミュニティ~地域内経済循環システムによる集落・農業の強靭化~
倉吉市が進める脱炭素の具体的な取り組み

倉吉市の脱炭素まちづくりでは、遊休農地や既存の農業インフラを活用した太陽光発電と、地域新電力を核とした事業体制づくりを軸に、集落と農業の再生に向けた取り組みを計画しています。
遊休農地を活用したどくだみ栽培の営農型太陽光発電
倉吉市は、担い手不足で増加する遊休農地を対象に、農地の上部に太陽光パネルを設置しながら農業も継続する営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に取り組みます。
栽培する作物には、遮光の影響を受けにくいどくだみを選定しており、遮光ネットなどの追加設備を抑えながら発電と栽培を両立させる方針です。
収穫したどくだみは、地元企業の株式会社ゼンヤクノーとの全量取引を行い、健康茶などの原料として活用します。
地域内で栽培から買取・加工までの流れを構築することで、遊休農地の再生と農業所得の確保を同時に目指しています。
農業インフラと兼用する垂直設置型太陽光パネルの導入
農地への太陽光発電導入にあたっては、両面から発電できる垂直設置型のパネルを、揚水ポンプの電源活用や防風樹、獣害防止柵の代替として設置します。
畜産試験場・園芸試験場・農業大学校・県立倉吉農業高等学校など県の農業関連施設も対象に含めており、実証や教育の場としても活用しながら、地域の農業関係者に営農型太陽光発電の手法を広げていく考えです。
地域新電力「鳥取みらい電力」と一般社団法人による事業運営体制
倉吉市・琴浦町・北栄町の3市町は、地域内経済循環による利益を原資とした「シュタットベルケ構想」のもと、共同出資により地域新電力「株式会社鳥取みらい電力」を設立しています。
また、事業を推進するための非営利型一般社団法人を新たに設立し、小売電気事業を担う鳥取みらい電力と両輪でグリーンエネルギーの地産地消・地域内経済循環を推進するほか、市町と連携しながらの遊休農地の集約やどくだみ栽培の調整など、地域住民との合意形成が必要な事業運営を担う計画です。
倉吉市の脱炭素まちづくりまとめ

倉吉市の脱炭素まちづくりは、東大山の中山間地域が抱える集落維持や遊休農地の課題に、エネルギーと農業の両面から向き合う取り組みです。
どくだみ栽培による営農型太陽光発電で得られる収益を地域内で循環させ、担い手不足に悩む農地を再び地域の資産に変えていくことを目指しています。
倉吉市・琴浦町・北栄町の3市町が連携して築いてきたこの仕組みを、同様の課題を抱える中山間地域のモデルとして育てていくことが、脱炭素を通じて倉吉市が描く未来です。

