千葉県北東部の太平洋沿いに位置する匝瑳市は、豊かな水田地帯が広がる一方で「日本有数の植木のまち」としても知られている自治体です。
この地域特性を軸に据えた脱炭素の取り組みが、近年全国から注目を集めています。
本記事では、匝瑳市の脱炭素先行地域としての具体的な施策を紹介します。
匝瑳市ゼロカーボンシティ宣言と脱炭素先行地域への選定

匝瑳市は令和3年12月3日、市議会12月定例会において「匝瑳市ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。
匝瑳市民・事業者・市が協働しながら省エネルギー化や再生可能エネルギーの利用を進め、2050年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指す内容です。
匝瑳市ゼロカーボンシティ宣言を土台として、市は令和5年11月7日、環境省の「脱炭素先行地域」に選定されています。全国から12件が選ばれた第4回選定のひとつであり、当時の千葉県では千葉市に次いで2例目の選定でした。
そうさ!匝瑳モデルで脱炭素!~ソーラーシェアリングを中心とした脱炭素化推進プロジェクト~(脱炭素先行地域に選定された取り組みの名称)
水田や畑地でのソーラーシェアリングを軸に、地域新電力や植木産業から出る資源の活用まで、匝瑳市の基幹産業を巻き込みながら脱炭素を進める取り組みです。
出典:匝瑳市ゼロカーボンシティ宣言の表明
出典:脱炭素先行地域選定証が授与されました
匝瑳市が進める脱炭素の具体的な取り組み

匝瑳市の脱炭素先行地域事業は、地域の主力産業と一体になった取り組みが特徴です。水田でのソーラーシェアリング、地域新電力を通じた電力供給、植木産業から出る資源の活用という3つの柱で構成されています。
水田に広がる営農型ソーラーシェアリング「匝瑳モデル」
匝瑳市ではもともと、畑地でのソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が先行事例として知られ、農林水産省の取組支援ガイドブックでも紹介されてきました。脱炭素先行地域事業では、畑地でのソーラーシェアリングのノウハウを水田にも広げる取り組みが進んでいます。
農地の上部に太陽光パネルを設置し、農作物の栽培と発電を同時に行う仕組みです。パネルの間に隙間を空けたり光を通しやすい角度で設置したりして農地に届く日照量を調整し、下では通常どおり作物を育てながら、上では発電による売電収入を得られます。
豊和・春海地区の水田・畑作では、オフサイトの営農型太陽光発電を導入し、独自の細型パネルを採用して日照量の減少を抑える工夫も取り入れています。
全国的な担い手不足や耕作放棄地の増加といった農業の課題に対し、匝瑳市発のモデルとして解決の道筋を示す狙いもあります。
地域新電力による再生可能エネルギーの地産地消
匝瑳市の脱炭素先行地域事業では、ソーラーシェアリングで発電した電力を、地域の新電力会社「しおさい電力」を通じて先行地域内の高圧需要家に供給する予定になっています。
住宅や民間施設にもオンサイトの太陽光発電・蓄電池の導入を進め、停電時には非常用電源としての活用も見込まれています。
事業を通じた収益の一部を地域基金として拠出し、地域の課題解決に役立てる仕組みづくりも進められています。
植木産業の剪定枝を生かしたバイオマス活用
匝瑳市は「日本有数の植木のまち」として知られ、市内には植木農家が数多く集まっています。
植木産業からは剪定枝という未活用資源が日常的に発生しており、脱炭素先行地域事業では剪定枝を地域バイオマス資源として活用する計画が進んでいます。
- 市内の植木業者から排出される剪定枝を燃料とするバイオマスボイラーを導入し、避難所に指定されている公共施設への熱供給に役立てる
- 剪定枝や放置竹林の竹などからバイオ炭を製造し、市内の田畑に散布して土壌改良とCO2の農地貯留につなげる
匝瑳市の脱炭素まちづくりまとめ

匝瑳市の脱炭素先行地域事業が示すのは、エネルギー対策を単独の施策として進めるのではなく、稲作や植木産業という地域の基幹産業そのものと組み合わせた発想です。
ソーラーシェアリングや剪定枝の活用は、農業や植木産業に新たな収入源を生み出すほか、担い手不足や耕作放棄地といった地域課題の解決にもつながる可能性を秘めています。
エネルギーの地産地消と産業振興を同時に進める匝瑳モデルは、他の農山村地域にとっても参考になる取り組みだといえるでしょう。


