政令指定都市である北海道札幌市は、横浜市・大阪市・名古屋市に次ぐ、全国4番目の人口規模を持つ市です。年間約5mの降雪がある寒冷地でありながら190万人超が暮らす、世界的にも珍しい都市として知られています。
道内全域を巻き込んだブラックアウトを経験し、都市の老朽化や人口減少といった課題も抱える中、令和4年11月に環境省の脱炭素先行地域(第2回)に選定されました。
都心の熱供給ネットワークや水素エネルギーを活用した、積雪寒冷地ならではの脱炭素まちづくりが進められています。
札幌市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

札幌市は、都心部の建物老朽化や平成30年胆振東部地震でのブラックアウトの経験を踏まえ、災害に強く環境にやさしいまちづくりの検討を重ねてきました。
- 平成30年:「SDGs未来都市」に選定
- 令和2年度:石狩市沖の洋上風力発電の余剰電力を活用した水素サプライチェーン構築の実現可能性調査を実施
- 令和4年5月:「札幌都心E!まち開発推進制度」の運用を開始
これらの取り組みを経て、令和4年11月1日には環境省の脱炭素先行地域(第2回)に選ばれています。
- 計画の名称
ゼロカーボン都市「環境首都・SAPP‿ RO」を目指して -産学官による積雪寒冷地モデルの構築- - 計画の内容
札幌都心民間施設群・水素モデル街区・北海道大学北キャンパス・市有施設群の4エリアを対象に、建物の省エネ化や再エネ導入、水素エネルギーの活用、地域熱供給ネットワークの拡充を進め、積雪寒冷地における脱炭素モデルの構築を目指す取り組みです。
札幌市が主体となって事業を進め、共同提案者である北海道ガス株式会社や北海道電力株式会社など5者が、熱供給・水素活用・大学施設の脱炭素化を担う体制がとられています。
出典:ゼロカーボン都市「環境首都・SAPP‿ RO」を目指して
出典:地域脱炭素移行・再エネ推進事業計画(脱炭素先行地域づくり事業)
札幌市が進める脱炭素の具体的な取り組み

札幌市の脱炭素まちづくりでは、性格の異なる4つのエリアを対象に、それぞれの特性に応じた取り組みが進められています。
出典:ゼロカーボン都市「環境首都・SAPP‿ RO」を目指して
都心再開発と連動した省エネ・再エネ導入
札幌都心では、1972年の冬季オリンピック開催に合わせて建てられた建物が更新時期を迎えており、今後10年間で建て替えが増加する見込みです。
札幌市は「札幌都心E!まち開発推進制度」を設け、民間開発の計画段階から事業者と協議を行い、容積率緩和などをインセンティブとして建物の省エネ化(ZEB化)や太陽光発電の導入を誘導しています。
北海道内初の大型水素ステーション整備
札幌市中央区の大通東5丁目には、大型のFCバスやFCトラックにも対応できる定置式の水素ステーションが整備される予定です。
北海道内では初めての大型モビリティ対応となる水素ステーションであり、公募で選ばれた民間事業者が純水素型燃料電池を備えた集客交流施設もあわせて整備します。
石狩市沖に建設予定の洋上風力発電の余剰電力を活用したグリーン水素の製造と組み合わせ、水素エネルギーの地産地消を目指す狙いがあります。
北海道大学北キャンパスの脱炭素化
北海道大学北キャンパスの総合研究棟6号館は、創薬に特化した研究施設です。キャンパス内で唯一の動物実験施設を備えています。
災害時にも研究を継続できるよう、屋上や周辺の未利用地に太陽光発電設備を導入し、蓄電池による電力供給の維持体制を整備する計画です。
市有施設でのZEB化・再エネ導入
札幌市は、環境マネジメントシステムの対象となるすべての市有施設を対象に、ZEB化やLED化、太陽光発電設備の導入を進めています。
新築・改築する建築物のZEB化に加え、屋根や未利用地への太陽光発電設置、駒岡清掃工場のごみ発電や中小水力発電の活用も組み合わせ、電力の自家消費を高める予定です。
また、地下鉄駅の乗換経路には下水熱を利用したロードヒーティングを設置し、積雪期でもバリアフリーな歩行環境を確保しています。
札幌市の脱炭素まちづくりまとめ

札幌市では、都心の建物更新という限られた機会を逃さず、省エネ・再エネ導入を確実に誘導する制度の整備を進めています。大学や市有施設など異なる主体を巻き込みながら、積雪寒冷地特有の課題に対処しようとしている点も特徴的です。
平成30年の胆振東部地震で経験したブラックアウトの記憶が、災害に強いまちづくりへの推進力になっています。
産学官による連携体制を通じて積み上げた知見は、豪雪地帯に指定されるほかの自治体にとっても参考になるでしょう。


