日光市(栃木県)が挑む国立公園の脱炭素化!温泉熱と廃食油バスで進める奥日光のアップデート

日光市(栃木県)が挑む国立公園の脱炭素化!温泉熱と廃食油バスで進める奥日光のアップデート 脱炭素先行地域の紹介

日光市は、栃木県北西部にある自治体です。県の約25%を占める広大な面積を持ち、標高200mの市街地から2,000m級の山岳地帯まで、変化に富んだ地形が広がっています。

脱炭素先行地域の対象エリアである「奥日光」(湯元地区・中宮祠地区)は、いろは坂を上った先にある日光国立公園の中核部分です。中禅寺湖や華厳の滝、ラムサール条約登録湿地の戦場ヶ原などを擁し、令和4年には環境省の「ゼロカーボンパーク」に登録されました。

燃料費高騰による宿泊施設の経営悪化や観光繁忙期の渋滞、災害時に「陸の孤島」となるリスクといった課題を抱える中、日光市は温泉熱の活用と廃食油バスの運行を軸に、奥日光の脱炭素化を進めています。

日光市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

日光市が脱炭素先行地域になるまでの歩み
出典:環境省

日光市は、令和4年7月に奥日光地域が環境省の「ゼロカーボンパーク」に登録されたことを一つの契機に、地域資源を生かした脱炭素の検討を進めてきました。

日光市における脱炭素の主な取り組み
  • 平成22年:「日光市環境基本計画」を策定
  • 令和2年7月:東武鉄道と共同で環境配慮型観光MaaS「NIKKO MaaS」の導入を開始
  • 令和4年5月:東京電力パワーグリッドと脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定を締結
  • 令和4年7月:奥日光地域が環境省の「ゼロカーボンパーク」に登録

これらの取り組みを経て、令和5年4月28日には環境省の脱炭素先行地域(第3回)に選ばれています。重点選定モデル「施策間連携」「地域版GX」「民生部門電力以外の温室効果ガス削減の取組」の3つにも選定されました。

脱炭素先行地域に選定された日光市の計画
  • 計画の名称
    雲の上のサステナブルリゾート「奥日光」:多様な観光資源と脱炭素による地元アップデート
  • 計画の内容
    奥日光エリア(湯元地区・中宮祠地区、約140km²)を対象に、住宅・宿泊施設・飲食物産店への太陽光発電の導入や温泉熱利用機器の導入、廃食油バスの運行を進め、観光業の活性化と地域のレジリエンス強化を同時に目指す取り組みです。
    日光市が主体となって事業を進め、共同提案者である東京電力パワーグリッド株式会社栃木総支社や東武鉄道株式会社が、再エネ電力の供給やモビリティの脱炭素化を担う体制がとられています。

出典:第3回脱炭素先行地域に選定されました
出典:雲の上のサステナブルリゾート「奥日光」:多様な観光資源と脱炭素による地元アップデート

日光市が進める脱炭素の具体的な取り組み

日光市が進める脱炭素の具体的な取り組み
出典:日光市

日光市の脱炭素まちづくりでは、奥日光エリアの住宅・宿泊施設・飲食物産店・公共施設を対象に、観光資源と組み合わせた取り組みが進められています。

出典:雲の上のサステナブルリゾート「奥日光」:多様な観光資源と脱炭素による地元アップデート

温泉熱の活用によるエネルギーコストの削減と冬季の利便性向上

奥日光は約1,200年前に発見された湯元温泉を抱える温泉地です。これまで宿泊施設の多くが温水ボイラーで給湯・暖房をまかない、豊富な温泉はかけ流しでそのまま排湯として捨てられてきました。

日光市は、源泉側で熱交換して回収した熱と排湯側の熱をヒートポンプでさらに利用する「カスケード方式」の熱交換設備を宿泊施設に導入し、灯油ボイラーからの転換を進めています。

熱交換後の排湯は駐車場のロードヒーティングにも二次利用し、除雪作業の負担軽減と冬季の観光利便性の向上につなげる計画です。

廃食油バスの運行によるモビリティの脱炭素化

奥日光エリアの主要なアクセス路はいろは坂の一本のみであり、観光繁忙期には数時間に及ぶ渋滞が発生し、住民の生活にも影響を及ぼしています。

EVバスは急な坂道での安全確保に技術的な懸念があるため、東武グループの宿泊施設等から回収した廃食油でバイオディーゼル燃料を製造し、域内を走る公共バス(計33台)に順次導入する方針です。

また、「日光市ゼロカーボン実現条例(仮称)」を制定し、観光客・住民の公共交通機関への乗り換えやEVの利用を後押しする計画もあります。

住宅・宿泊施設・飲食物産店への太陽光発電の導入

奥日光エリアは日光国立公園内にあるため、大規模な風力発電設備の設置は景観保全の観点から見送られました。

一般住宅73戸、宿泊施設54軒、飲食物産店等68軒の屋根や駐車場に太陽光発電を分散して導入し、合計で約5,100kWの発電を見込んでいます。

太陽光発電を導入する事業者には蓄電池の設置も勧め、平常時は自家消費量を増やしながら、非常時には避難施設等でのBCP電源として活用する予定です。

木質バイオマス発電と水力発電のリパワリングによる防災力の強化

奥日光エリアは立地の特性上、災害時や荒天時に「陸の孤島」となる恐れがあります。

指定避難所である中宮祠小中学校に木質バイオマス発電設備を導入し、停電時でも避難所の機能を維持できる体制を整備中です。

対象地域内で稼働している既存の水力発電所についても、設備のリパワリング(更新による出力増強)を進め、発電規模の拡大を計画しています。

日光市の脱炭素まちづくりまとめ

日光市の計画は、これまで捨てられていたものを資源に変える発想で組み立てられています。廃食油はバスの燃料になり、温泉の排湯は熱源として再利用されます。

日光市が掲げるビジョンは「Feel so good!! 暮らして満足 訪ねて納得 自然と笑顔になれるまち」です。奥日光では、地域課題の解決と豊かな自然の両立を通じて住民と滞在者の交流を促し、社会と経済がサステナブルに発展する脱炭素社会の実現を目指しています。

監修者

エコ×エネの相談窓口コラムでは「満足いただける情報、損をしない業者選びをお届けすること」を大切にしています。

太陽光発電や蓄電池の導入では、初期費用の高さに目が行きがちですが、実際にお得になるかどうかは補助金の活用度合いや、その後の光熱費削減効果まで含めて見る必要があります。エコ×エネの相談窓口では、そうした費用対効果の視点から、メーカー比較や価格相場の情報をお届けしています。

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【保有資格】太陽光発電アドバイザー(2025年取得)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(2021年取得)

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