栃木県のほぼ中央にある宇都宮市は、北関東の中核都市です。人口は約51万人(令和8年6月時点)ですが、平成29年度の約52万人をピークに減少局面に入っています。
栃木県は一人当たりの自家用車保有率が全国2位であり、宇都宮市も自動車への依存度が高く、運輸部門のCO₂排出割合は全国平均より高くなっています。また、冬季の日照量の多さを背景に太陽光発電の導入が進んだ結果、市内全域が新たな再エネを送配電網に流せない「系統連系制約エリア」です。
宇都宮市はこれらの課題に、令和5年8月開業の全国初の全線新設LRT「ライトライン」を核とした取り組みで向き合っています。LRTの走行電力を地域新電力による再エネ100%でまかない、都市機能を拠点に集約する「ネットワーク型コンパクトシティ」の実現とあわせて、脱炭素化を推進中です。
出典:宇都宮市
宇都宮市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

宇都宮市は、自動車依存からの脱却と再エネの地産地消を目指し、LRTの整備と地域新電力の設立を並行して進めてきました。
- 平成30年5月:「LRT沿線の土地利用方針」を策定
- 令和元年7月:内閣府「SDGs未来都市」に選定
- 令和2年7月:「宇都宮駅東口地区における低炭素まちづくり計画」を策定
- 令和3年7月:地域新電力会社「宇都宮ライトパワー株式会社」を設立
- 令和3年9月:「ゼロカーボンシティ」を表明
これらの取り組みを経て、令和4年11月1日には環境省の脱炭素先行地域(第2回)に選ばれています。北関東3県では初めての選定でした。
- 計画の名称
コンパクト・プラス・ネットワークによる脱炭素モデル都市構築~LRT沿線からはじまるゼロカーボンシティの実現~ - 計画の内容
JR宇都宮駅東側のLRT沿線(14.6km)における公共施設・民間施設・大学・一般家庭を対象に、太陽光発電・蓄電池の導入とLRT・電気バスの再エネ化を進め、自動車依存からの脱却と再エネの主力電源化を同時に目指す取り組みです。
宇都宮市が主体となって事業を進め、共同提案者である芳賀町や宇都宮ライトパワー株式会社など6者が、LRTの脱炭素化や再エネ供給、エネルギーマネジメントを担う体制がとられています。
出典:脱炭素先行地域
出典:コンパクト・プラス・ネットワークによる脱炭素モデル都市構築~LRT沿線からはじまるゼロカーボンシティの実現~
宇都宮市が進める脱炭素の具体的な取り組み

宇都宮市の脱炭素まちづくりでは、LRT沿線の公共施設・民間施設・大学・一般家庭を対象に、系統制約の克服と運輸部門の脱炭素化に着目した取り組みが進められています。
出典:コンパクト・プラス・ネットワークによる脱炭素モデル都市構築~LRT沿線からはじまるゼロカーボンシティの実現~
再エネ100%で走る全国初の全線新設LRT「ライトライン」
令和5年8月に開業したLRTは、宇都宮駅東口から芳賀町の工業団地までの14.6kmを結んでいます。
運行を担う宇都宮ライトレール株式会社は、走行に必要な電力すべてを地域新電力「宇都宮ライトパワー株式会社(ULP)」が供給する再エネでまかなう「ゼロカーボントランスポート」に取り組んでいます。
市内のごみ焼却施設で発電するバイオマス電力等を活用し、自家用車からLRTへの利用転換と合わせて年間約8,800トンのCO₂削減を見込んでいます。
系統制約下で再エネを最大限に生かす大規模蓄電池
栃木県は冬季の日照量の多さを背景に太陽光発電の導入が全国的にも進んでおり、宇都宮市内は新たな再エネ電源を送配電網に流せない「系統連系制約エリア」に指定されています。
電力価格が安い時間帯に充電し、LRTの通勤・通学ピーク時間帯に放電することで、系統の増強なしに再エネの活用量を拡大しています。
電気バスと一体化したエネルギーマネジメントシステム
市内でバス事業を展開する関東自動車株式会社は、路線バス158台を電気バスに切り替える予定です。
単に車両を電動化するだけでなく、充電のタイミングを分散させ再生可能エネルギーを優先的に使うよう制御する「バスEMS」を新たに開発し、大規模なバス車両群に適用します。
バス車両群への適用は国内初の試みであり、電力需要のピークを抑えながら、非常時に電気バスを地域の電源として活用することも期待されています。
公共・民間施設と住宅への太陽光発電導入とULPによる電力供給
LRT沿線の公共施設16か所・民間施設23か所・大学2か所・戸建住宅1,533戸を対象に、太陽光発電と蓄電池を導入します。
自家消費だけで賄えない施設には、ULPが再エネ電力メニューを提供し、地域全体で再エネを融通し合う体制を構築しています。
宇都宮市の脱炭素まちづくりまとめ

LRTという新しい交通インフラを、宇都宮市は再エネの「使い道」として位置づけています。太陽光とバイオマスという性質の異なる2つの余剰電力を、1つの蓄電池でLRTに振り向ける発想は、系統制約という制約を逆手に取った工夫です。
宇都宮市は「宇都宮市カーボンニュートラルロードマップ」で、2030年度までに市域全体で2013年度比50%削減という目標を掲げています。
目指す姿は「環境負荷の少ないまち」「子どもから高齢者まで誰もが安全で快適に移動できるまち」です。自動車に頼らずとも暮らせるまちづくりを、脱炭素というもう一つの軸から後押ししようとしています。

