米沢市と飯豊町は、山形県南部の置賜地域にある自治体です。日本三大和牛の一つ「米沢牛」の産地として知られており、両自治体で国内の肥育頭数の約6割を占めています。
家畜排せつ物の処理は、小規模な畜産農家にとって大きな負担となってきました。堆肥化には人手やコストがかかるほか、未完熟堆肥の臭気が近隣住民との摩擦を生むこともあります。
米沢市と飯豊町は、牛の排せつ物をエネルギーに変えるバイオガス発電で、この課題の解消に取り組んでいます。
米沢市・飯豊町が脱炭素先行地域になるまでの歩み

米沢市と飯豊町は、家畜排せつ物処理という共通の課題に向き合う中で、バイオガス発電を軸とした資源循環に段階的に取り組んできました。
- 令和2年:山形県が「ゼロカーボンやまがた2050」を宣言
- 令和2年:飯豊町で「ながめやまバイオガス発電所」(500kW)が稼働を開始し、日本初の肉用牛バイオガス発電施設となる
- 令和2年:米沢市・飯豊町がそれぞれゼロカーボンシティを宣言
- 令和5年4月:山形県が「山形県脱炭素社会づくり条例」を施行
これらの取り組みを経て、令和7年5月9日には環境省の脱炭素先行地域(第6回)に選ばれています。山形県内では初めての選定となりました。
- 計画の名称
米沢×飯豊発!米沢牛と地域連携で挑む肉用牛バイオガス発電モデル2.0による脱炭素への道 - 計画の内容
米沢市東部4地区(上郷・窪田・万世・山上)と飯豊町全域を対象に、肉用牛の排せつ物を使ったバイオガス発電の新設や、木質マイクロバイオマス熱電併給、太陽光発電・小水力発電の導入を進め、米沢牛のサプライチェーン全体の脱炭素化と地域経済循環を目指す取り組みです。
米沢市と飯豊町が主体となって事業を進め、共同提案者である山形県やおきたま新電力株式会社など24者が、電力供給や資金調達支援、ブランド戦略の推進を担う体制がとられています。
出典:脱炭素先行地域について(概要)
出典:米沢×飯豊発!米沢牛と地域連携で挑む肉用牛バイオガス発電モデル2.0による脱炭素への道
米沢市・飯豊町が進める脱炭素の具体的な取り組み

米沢市・飯豊町の脱炭素まちづくりでは、米沢市東部4地区と飯豊町全域を対象に、米沢牛のサプライチェーンに着目した取り組みが進められています。
出典:米沢×飯豊発!米沢牛と地域連携で挑む肉用牛バイオガス発電モデル2.0による脱炭素への道
肉用牛バイオガス発電所の新設と液肥のペレット肥料化
飯豊町では令和2年から「ながめやまバイオガス発電所」(500kW)が稼働しており、肉用牛の排せつ物を使った日本初の発電施設として実績を積んできました。米沢市と飯豊町はこの経験を踏まえ、それぞれ500kWのバイオガス発電所を新設します。
発酵後に残る消化液は、これまで液体のまま農地に散布するしか使い道がありませんでしたが、濃縮・乾燥させてペレット肥料に加工する設備も導入し、保管や運搬のしやすさを高めます。
木質マイクロバイオマス熱電併給による食肉センターの脱炭素化
米沢牛は基本的に米沢市食肉センターで加工され、市場に流通します。このセンターは年間約150万kWhの電力と約12万リットルの灯油を使用しており、エネルギーコストの高騰が課題となっています。
米沢市はセンターに木質マイクロバイオマス熱電併給設備(192kW)を導入し、電力と熱の両方を賄う計画です。
これまでセンターには停電時の予備電源がなく、災害等で稼働が止まれば食肉の廃棄で1億円以上の損害が生じる恐れがありましたが、マイクロバイオマス発電は停電時も稼働できるため、BCP対策としての役割も担います。
オンサイト・オフサイトPPAによる太陽光発電の導入
米沢市の戸建住宅・事業所・公共施設と、飯豊町の家庭・工業団地の企業を対象に、PPA方式による太陽光発電を合計7.0MW導入します。
特別豪雪地帯であるこの地域では、屋根に積もった雪で通常のパネルの発電量が落ちてしまうため、地元の工務店と連携して開発した垂直型のパネルも組み合わせ、雪が積もりにくい構造で冬季の発電量を確保します。
小水力発電と断熱改修による暮らしの脱炭素化
飯豊町の小白川地区には、小水力発電設備(200kW)を新設します。太陽光の発電量が落ち込む冬場でも安定して電力を供給できる電源として、地域内の需要を支える予定です。
米沢市・飯豊町の脱炭素まちづくりまとめ

米沢市と飯豊町の計画は、家畜排せつ物という厄介な廃棄物を出発点に、それを電気・熱・肥料という3つの資源へと分けて活用する発想で組み立てられています。
すでに動いている飯豊町の発電所の知見をそのまま米沢市側に引き継ぐことで、ゼロから始めるより早く、確実に成果を積み上げられる設計になっている点も特徴です。
米沢市は2030年以降、地域資源循環モデルを米沢牛以外の産品にも広げ、次は第二次産業の脱炭素化を目指す方針です。飯豊町は、新設するバイオガス発電所の運営で生まれる雇用を土台に、新産業分野での創業や移住者の増加につなげていくとしています。


