生坂村は、長野県のほぼ中央、東筑摩郡に位置する中山間の農村です。北アルプスを水源とする犀川が村内を流れ、川沿いの段丘地にはぶどう畑が広がっています。
県内の市町村では5番目に規模が小さく、令和8年7月時点の人口は約1,600人ですが、環境省の脱炭素先行地域に選定されたことで全国から注目を集める存在になっています。
本記事では、長野県生坂村が進める脱炭素先行地域の取り組み内容を紹介します。
生坂村ゼロカーボンシティ宣言と脱炭素先行地域への選定

生坂村は令和4年6月26日、「生坂村ゼロカーボンシティ宣言」を行いました。翌年2月には「生坂村脱炭素ロードマップ」を策定し、2050年に目指す村の姿と2030年の中間目標を示しています。
生坂村脱炭素ロードマップに基づき、令和5年4月28日、生坂村は環境省の第3回脱炭素先行地域に選定されました。
第3回選定では16件の提案が脱炭素先行地域に選ばれましたが、その中でも「自営線マイクログリッドなど削減効果の大きな技術導入」により地域経済への貢献が期待される提案は、「地域版GXモデル」としてさらに評価されました。
生坂村の自営線マイクログリッド構想は、第3回選定で地域版GXモデルとして環境省から高い評価を受けた取り組みの一つです。
出典:長野県生坂村 環境省の脱炭素先行地域に選定
出典:脱炭素先行地域の選定(第3回)について
生坂村の脱炭素への具体的な取り組み

生坂村の提案は、電力・熱・住まいの3分野にまたがる4つの柱で構成されています。
PPAを活用した太陽光発電・蓄電池の村全域導入
生坂村では、屋根や敷地に余裕がある家庭・事業者を対象に、オンサイトPPAで太陽光発電と蓄電池を設置します。初期費用をかけずに再生可能エネルギーを導入できる点がメリットです。
両方の手法を組み合わせ、村内の家庭・事業者が再生可能エネルギーを広く利用できる体制を整えます。
上生坂区に築く自営線マイクログリッド
生坂村の中心地である上生坂区では、ぶどう圃場や主要な民間施設を対象に、自営線マイクログリッドを構築します。
電力会社の送配電網とは別に、地域内の発電設備と家庭・事業者を独自の送電線でつなぎ、その区域内で電力を融通し合う仕組みです。
平時は再生可能エネルギーを地域内で活用し、災害などで外部からの電力供給が止まった場合にも、区域内で電力を確保できる体制を目指します。
自営線マイクログリッド構築の取り組みが、環境省による「地域版GXモデル」の選定にもつながっています。
古民家の脱炭素リノベーションによる移住・定住促進
生坂村には、空き家となった古民家が点在しています。これらの古民家に断熱改修や省エネ設備の導入を施し、脱炭素型の住まいとして再生する計画です。
改修した古民家は移住者の受け入れ先としても活用し、村の過疎対策と定住促進につなげます。住まいの脱炭素化と、人口減少への対応を組み合わせた取り組みです。
木質ペレット工場の建設と村内林業の再構築
生坂村は、村の面積の多くを森林が占めています。この地域資源を生かし、木質ペレット工場の建設と、家庭・施設へのペレットストーブ導入を進める予定です。
村内で伐採した木材をペレット燃料として活用する流れをつくり、村内林業の再構築を図ります。
生坂村の脱炭素まちづくりまとめ

生坂村が進める脱炭素まちづくり事業は、電力の自給・熱利用・住まいの再生という複数の分野を、村全域を舞台に一体的に進める点に特色があります。
人口1,600人ほどの小さな山村が、全国的にも珍しい「地域版GXモデル」に選ばれたという事実は、規模の小ささが取り組みの妨げにはならないことを示しています。
中山間地域の脱炭素化を先駆けて進める生坂村の歩みは、同じような条件を抱える全国の農山村にとって、一つの参考例になり得るものです。


