岩手県北東部の沿岸に位置する久慈市は、旧久慈市と国から過疎地域に認定されている旧山形村が合併し、平成18年に誕生しました。
旧山形村は林業を基幹産業の一つとしてきましたが、安価な外国産材との価格競争で林家の収入が減少し、就業人口の減少や人口流出が続いています。
久慈市は、林地の残材や伐採時に生じる樹皮を熱源として活用する木質熱電併給システムの導入により、林業振興と脱炭素化を組み合わせた取り組みを進めています。
久慈市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

久慈市は、震災時の避難所での電源不足と、旧山形村の林業衰退による雇用減少という2つの課題に向き合う中で、再生可能エネルギーの地産地消を軸としたまちづくりを進めてきました。
- 平成29年10月:岩手県内初の地域新電力「久慈地域エネルギー株式会社」を設立
- 令和2年4月:市内の滝発電所(小水力)の電力を公共施設に供給開始
- 令和3年:「地域に裨益する再生可能エネルギー事業の実施に関するガイドライン」を策定
これらの取り組みを経て、令和4年11月1日には環境省の脱炭素先行地域(第2回)に選ばれています。
- 計画の名称
過疎地域を未来に向けて発展させる脱炭素先行地域の提案 - 計画の内容
久慈市山形町(旧山形村)全域を対象に、太陽光・陸上風力発電の導入、木質熱電併給システムの導入、公用車・患者輸送バスのEV化を進め、地域新電力を通じた電力の地産地消と過疎地域の課題解決を目指す取り組みです。
久慈市が主体となって事業を進め、共同提案者である久慈地域エネルギー株式会社や株式会社岩手銀行が、電力供給や資金調達支援を担う体制がとられています。
出典:脱炭素先行地域に選定されました!
出典:過疎地域を未来に向けて発展させる脱炭素先行地域の提案
久慈市が進める脱炭素の具体的な取り組み

久慈市の脱炭素まちづくりでは、旧山形村全域を対象に、地域新電力を軸とした取り組みが進められています。
地域新電力を通じた電力の地産地消
久慈市の地域新電力である久慈地域エネルギー株式会社は、市内の太陽光発電事業者と連携し、旧山形村エリアの住宅・事業所・公共施設などにPPA方式で太陽光発電を導入する計画です。
公募型プロポーザルで選定した事業者による陸上風力発電(330kW×10基)も導入し、電源構成の幅を広げる予定です。
旧山形村内の遊休市有地や陸上風力で発電した再エネ電力は久慈地域エネルギー株式会社が買い取り、旧山形村内の住宅・事業所・公共施設などに供給する体制を整えます。
木質熱電併給システムの導入で林業を振興
旧山形村では、伐期を迎えた森林の約6割が活用されず、樹皮などの端材も産業廃棄物として処理されてきました。
久慈市は、福祉施設に乾燥チップやバークを燃料とする木質熱電併給システムを導入し、これまで重油や灯油に頼っていた熱源を切り替えます。
チップの需要が生まれ、地区内の森林事業者やチップ製造企業の収益増加、雇用機会の創出にもつながる狙いです。
公用車・患者輸送バスのEV化
久慈市は公用車14台と患者輸送バス1台をEV化し、新たに1台のEVバスも導入します。
燃料費の削減分と、買い物客の混乗による収入増加分を運行便数の増加に充て、通院・通学・買い物の移動手段が乏しい旧山形村の交通弱者を支援します。
久慈市の脱炭素まちづくりまとめ

生産額としては小さい林業を、久慈市は脱炭素の主役に据えました。伐期を迎えたまま放置されていた森林や産業廃棄物だったバークは、熱電併給システムの燃料という新しい出口を得て、衰退していた産業に雇用と収益を呼び戻す手段に変わります。
公用車のEV化も、燃料費の削減にとどまらず、患者輸送バスの増便という形で住民の暮らしに直接還元される予定です。
久慈市はこの計画を、再エネ導入だけで終わらせず、DXや広域連携も含めた「過疎地域振興策」全体の一部として位置づけています。市が目指すのは、地域住民一人ひとりが脱炭素を自分ごととして捉え、旧山形村に住み続けられるまちをつくっていくことです。


