宮城県東松島市は、東日本大震災の被災経験を教訓に、震災復興と脱炭素を両立させるまちづくりを進めています。
令和4年には環境省の脱炭素先行地域に宮城県内で唯一選定され、野蒜地区を中心に太陽光発電や地域新電力の活用など複数の取り組みが進行中です。
本記事では、東松島市が目指す脱炭素社会に向けた具体的な取り組みを紹介します。
東松島市における脱炭素先行地域選定の経緯と目標

出典:東松島市
東松島市は、平成23年の東日本大震災でライフラインが機能停止した経験を教訓に、震災に強く環境に優しい分散型再生可能エネルギーの導入を復興まちづくり計画に盛り込みました。
その後、「環境未来都市」構想やSDGs未来都市計画へと取り組みを広げ、令和4年2月に環境省の脱炭素先行地域(第1回)に応募しています。
同年4月26日、全国26自治体の一つ、宮城県内では唯一の脱炭素先行地域に選定され、共同提案者の一般社団法人東松島みらいとし機構(HOPE)とともに、震災復興と脱炭素の両立に取り組んでいます。
東松島市全体では、東松島市地球温暖化対策総合計画において、令和12年度(2030年度)までの温室効果ガス排出量50%削減を目標に掲げています。また、脱炭素先行地域の対象となっている野蒜地区は、その先行モデルとして位置付けられています。
出典:環境省脱炭素先行地域(第1回)選定
出典:東松島市地球温暖化対策総合計画について
東松島市の具体的な取り組み

東松島市では、震災復興の経験を活かしたエネルギー自立のまちづくりが野蒜地区を中心に進んでいます。太陽光発電の導入や地域新電力の活用、防災に強いまちづくりなど、複数の取り組みが並行して進められている点が特徴です。
野蒜地区の太陽光発電導入
脱炭素先行地域の対象となっている野蒜地区では、震災後に空き地となっていた移転元地を発電拠点として活用し、合計4,510kWの太陽光発電を導入する計画です。
住宅用蓄電池の導入も進めており、平常時の自家消費に加え、災害時にも一定の電力を自宅で確保できる体制を目指しています。
旧野蒜小学校周辺のマイクログリッド構築
旧野蒜小学校の周辺では、自営線による小規模な電力網(マイクログリッド)を構築し、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた電力供給体制を整えています。
震災で甚大な被害を受けた野蒜地区の経験を踏まえ、平常時の脱炭素化と災害時の電力確保を両立させる目的で進められています。
地域新電力HOPEによる電力の地産地消
東松島市は、震災の翌年にあたる平成24年10月、復興まちづくり計画を推進する中間支援組織として一般社団法人東松島みらいとし機構(HOPE)を設立しました。
脱炭素先行地域づくり事業では、HOPEと電気契約を結ぶ農業・漁業施設や市内の公共施設を、再生可能エネルギーのメニューへ順次切り替える計画です。
HOPEが蓄電池を活用しながら地域全体のエネルギーマネジメントを担い、電力の地産地消を通じて経済・エネルギー・人の循環を生み出す取り組みを進めています。
出典:環境未来都市に関する取組
スマート防災エコタウンの取り組み
東松島市は、積水ハウス株式会社との官民連携により「スマート防災エコタウン」を整備しました。
災害公営住宅と周辺の病院・公共施設を自営線で結ぶマイクログリッドを構築し、太陽光発電と蓄電池、大型のバイオディーゼル発電機を組み合わせることで、系統電力が遮断された場合でも3日間程度の電力供給を維持できる体制を整えています。
大震災のような長期の停電時にも、病院や集会所など災害活動の拠点施設への電力供給を継続できる点が特徴です。地域の災害対応力の向上に貢献しています。
この取り組みは、環境省の補助を受けて一般社団法人低炭素社会創出促進協会が実施する「自立・分散型低炭素エネルギー社会構築推進事業」の一環として進められました。
東松島市の脱炭素まちづくりまとめ

東松島市は、東日本大震災からの復興を通じて培ったエネルギー自立の知見を、脱炭素先行地域としての取り組みへとつなげています。
野蒜地区の太陽光発電やマイクログリッド構築、地域新電力HOPEによる電力の地産地消、スマート防災エコタウンなど、震災復興と脱炭素を両立させる取り組みが今後も広がっていく見通しです。
市全体で掲げる令和12年度までの温室効果ガス排出量50%削減という目標に向け、野蒜地区での取り組みが今後の市内展開のモデルとなっていくことが期待されています。


