北川村は、高知県東部に位置する山村です。人口は令和8年2月時点で1,155人、総面積の約95%を森林が占め、奈半利川沿いに26の集落が点在しています。
フランスのクロード・モネ財団から世界で唯一認可を受けた庭園「モネの庭」や、幕末の志士・中岡慎太郎の資料館など、高知県東部を代表する観光施設が集まる村としても知られています。
本記事では、高知県北川村が脱炭素先行地域に選定されるまでの歩みと、脱炭素まちづくりの具体的な取り組みを紹介します。
出典:北川村
北川村が脱炭素先行地域になるまでの歩み

北川村は、人口減少という村の最重要課題に向き合う中で、地域の再生可能エネルギー資源を生かした発電事業の検討を重ねてきました。
- 平成30年:四国電力送配電と小水力発電設備の系統連系契約を締結
- 令和元年8月:発電事業を担う一般社団法人北川村振興公社を設立
- 令和2年〜令和3年:村内3河川(宗ノ上川・蛇谷川・矢筈谷川)で小水力発電設備の基本計画・詳細設計を実施
- 令和4年:平鍋ダムを活用した小水力発電について、電源開発株式会社と協議を進める
これらの取り組みを経て、令和5年4月には環境省の脱炭素先行地域(第3回)に選定されました。
- 計画の名称
「持続可能な人口1,000人の村」モデル構築に向けた北川村版脱炭素事業推進プロジェクト - 計画の内容
豊富な水資源を生かした小水力発電を主体に、公共施設への太陽光発電やゆずのソーラーシェアリングを組み合わせ、村全域の脱炭素化と人口減少対策を同時に進める取り組みです。
出典:『持続可能な人口1,000人の村』モデル構築に向けた北川村版脱炭素事業推進プロジェクト
出典:環境省「脱炭素先行地域」の選定について
北川村の脱炭素に向けた具体的な取り組み

北川村の脱炭素先行地域計画は、村内河川における小水力発電を柱に、人口減少や災害への備えといった村の課題解決を組み合わせています。
出典:『持続可能な人口1,000人の村』モデル構築に向けた北川村版脱炭素事業推進プロジェクト
村内河川での小水力発電設備の整備
北川村にある宗ノ上川・蛇谷川・矢筈谷川・平鍋清水バイパスでは、小水力発電設備(合計739.4kW)を整備し、令和12年度までに村内の民生部門の電力需要の約91%をまかなう計画です。
平鍋清水バイパスでは、電源開発株式会社が所有する平鍋ダムの放流設備を活用します。電力会社が所有するダムの敷地内に自治体が発電設備を設置する事例は、全国でも初めてです。
発電した電力は、全量が四国電力を通して村内の住宅・事業所・公共施設に届けられます。
公共施設・住宅への太陽光発電と蓄電池の導入
小水力発電で電力需要の約91%をまかなうのに対し、残りの約9%は公共施設や住宅への太陽光発電設備の導入で対応する計画です。
北川村振興公社がPPA方式で公共施設9施設(合計312kW)に太陽光発電設備を設置するほか、移住者向けの村営住宅や一般住宅への導入補助も進めています。
観光施設を巡るEVバスの導入
村の主要観光施設である「モネの庭」「中岡慎太郎館」「北川温泉ゆずの宿」を巡る村営バスをEV化し、100%再エネ電力で稼働するサステナブルツーリズムを構築する計画です。
EV化した車両は、災害時には走る蓄電池として、高知県内市町村災害時相互応援協定に基づき県内34市町村への支援にも活用できます。
耕作放棄地を生かしたゆずのソーラーシェアリング
村の基幹産業であるゆず栽培においては、農業従事者の高齢化に伴う後継者不足と、それによる耕作放棄地の拡大が課題となっています。
北川村の脱炭素先行地域事業では、圃場整備を行った耕作放棄地にソーラーシェアリング(10kW)を導入し、遮光環境下でのゆず栽培技術を確立する計画です。
また、ソーラーシェアリングで発電した電力は、栽培用の電動農機具の充電などに使います。
北川村の脱炭素まちづくりまとめ

北川村の脱炭素まちづくりの軸にあるのは、脱炭素と人口減少対策を切り離さずに進めている点です。
小水力発電の運営や太陽光発電の維持管理は北川村振興公社の雇用を生み、ゆずのソーラーシェアリングは後継者不足という農業の課題そのものに向き合っています。
電力会社が所有するダムを活用した発電施設の整備など、全国的にも珍しい取り組みを重ねながら、北川村は「持続可能な人口1,000人の村」という将来像に一歩ずつ近づいています。


