秋田県大潟村は、日本第2位の面積を誇っていた湖「八郎潟」を約20年かけて干拓してできた、昭和39年誕生の新しい村です。村全域が海抜0メートル以下という珍しい立地であり、周囲を堤防で囲み常時排水機場で排水しています。
村の総電力消費量の約1/3が排水機場で利用され、大規模停電が長期化すれば村そのものが浸水するリスクを抱えています。また、稲作で大量に発生する未利用のもみ殻の処理にも悩まされてきました。
大潟村はこれらの課題に、もみ殻を燃料にした地域熱供給と、排水機場のBCP(事業継続計画)強化を組み合わせた「自然エネルギー100%の村づくり」で向き合おうとしています。
大潟村が脱炭素先行地域になるまでの歩み

大潟村は、系統への送電容量に空きが少ないという地域特有の制約に向き合う中で、自然エネルギーの導入可能性を探ってきました。
- 平成22年度:「大潟村自然エネルギーの導入及び省エネルギーの促進に関する実施計画」を策定
- 平成26年:官民出資による株式会社大潟共生自然エネルギーを設立し、出力2MWのメガソーラーを建設
- 令和元年度:「大潟村脱炭素型地域づくりモデル形成事業報告書-自然エネルギー100%の村づくりへの挑戦-」を策定し、ゼロカーボンシティを表明
- 令和2年度:「大潟村バイオマス産業都市構想」を策定
これらの取り組みを経て、令和4年4月26日には環境省の脱炭素先行地域(第1回)に選ばれています。
- 計画の名称
自然エネルギー100%の村づくりへの挑戦!~第1章電気編~ - 計画の内容
村役場庁舎を中心とした公共施設・商業施設・秋田県立大学キャンパス・村営住宅・一般住宅を対象に、太陽光発電と系統蓄電池を導入するとともに、もみ殻を燃料にした地域熱供給や排水機場の再エネ化を進め、村全体の脱炭素化を目指す取り組みです。
大潟村が主体となって新設の地域エネルギー事業会社を通じて事業を進め、村民や地元金融機関からも出資を募ることで、地域内での経済循環を実現する体制がとられています。
出典:大潟村「脱炭素先行地域」に選定されました
出典:自然エネルギー100%の村づくりへの挑戦!~第1章電気編~
大潟村が進める脱炭素の具体的な取り組み

大潟村の脱炭素まちづくりでは、系統制約に対応した独自の手法で、公共施設・商業施設・住宅を対象とした再エネ導入が進められています。
出典:自然エネルギー100%の村づくりへの挑戦!~第1章電気編~
太陽光発電と系統蓄電池による新しい系統連系
大潟村では、公共施設・商業施設・住宅の屋根や敷地に、合計3,291kWの太陽光発電を新設します。それでも脱炭素先行地域内の電力需要を賄いきれないため、村有地にメガソーラー2か所(計6MW)も設置する計画です。
秋田県内はすでに風力・太陽光の送電容量に空きが少なく、新たに発電した電力をそのまま送電線に流すことができません。
もみ殻バイオマスによる地域熱供給
大潟村では毎年、稲作にともなって大量のもみ殻が発生しています。その多くは十分に活用されないまま、処理費用や飛散が生じるという問題を抱えてきました。
もみ殻は高温で燃やすと発がん性物質「結晶性シリカ」が生じるため、大潟村は平成29年からデンマークのメーカーやプランニング会社と共同で、シリカの発生を抑えた燃焼技術の開発に取り組んでいます。
脱炭素先行地域の計画では、稲の収穫物を保管するカントリーエレベーターにもみ殻ボイラーを設置し、地中に埋設した熱導管でホテルサンルーラル大潟やポルダー潟の湯といった施設に温水を供給する予定です。将来的には村営住宅への熱供給拡大も見込んでいます。
排水機場のBCP強化
全域が海抜0メートル以下である大潟村には、周囲の堤防内から常時排水を続ける排水機場が欠かせません。
排水機場の電力消費量は村全体の約1/3を占め、大規模な停電が長期化すれば村そのものが浸水するリスクがあります。
大潟村の脱炭素まちづくりまとめ

大潟村の脱炭素まちづくりの取り組みは、送電容量が少ない制約を、系統蓄電池による新しい連系方法に変える発想が土台となっています。
もみ殻という厄介物や村の生命線である排水機場も、それぞれ独立した課題ではなく、電気・熱・防災という3つの切り口で同じ再エネ基盤に組み込んでいます。
大潟村は「自然エネルギー100%の村づくりへの挑戦」として、2030年までの電気の100%自然エネルギー化を掲げ、2050年には灯油・軽油・ガソリンを含むすべてのエネルギーの自然エネルギー化を目指す方針です。
海抜0メートル以下の干拓地という珍しい立地も、大潟村にとっては制約ではなく、モデルケースとして生かそうとしています。


