沖縄本島の南西約290kmに位置する宮古島市は、6つの島からなる自治体です。亜熱帯の気候と美しい海を背景に、年間100万人規模の観光客を集める観光地として知られています。
本土の電力系統とつながっていない独立系統の離島であり、台風時の停電が長期化しやすいことに加え、化石燃料に頼る発電によってエネルギー代金が域外へ流出する課題も抱えています。
これらに対応するための「脱炭素グリッド」と呼ばれる独自の電力管理体制が、同様の課題を抱える他の自治体から注目を集めています。
宮古島市が脱炭素先行地域になるまでの歩み

宮古島市は、観光客の急増に伴うエネルギー需要の拡大と、離島特有の電力供給の不安定さという課題に向き合う中で、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー導入の検討を重ねてきました。
- 平成20年3月:「エコアイランド宮古島宣言」を表明
- 平成30年3月:「エコアイランド宮古島宣言2.0」を発表
- 令和4年1月:経済産業省の「地域マイクログリッド構築事業」による実証設備の運用を来間島で開始
- 令和4年3月:2050年までの二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を表明
これらの取り組みを経て、令和5年11月7日には環境省の脱炭素先行地域(第4回)に選ばれています。沖縄県内では与那原町に続き、2例目の選定となりました。
- 計画の名称
「千年先の、未来へ。」脱炭素エコアイランド宮古島 - 計画の内容
下地地区・狩俣地区(来間島を含む)を対象に、太陽光発電と蓄電池を中心とした「脱炭素グリッド」を構築し、地域内の電力潮流を計測しながら分散型電源をリアルタイムで制御する取り組みです。
出典:宮古島市脱炭素先行地域
出典:「千年先の、未来へ。」脱炭素エコアイランド宮古島
出典:宮古島市を脱炭素先行地域に
宮古島市が進める脱炭素の具体的な取り組み

宮古島市の脱炭素先行地域計画は、脱炭素グリッドによる電力管理を柱に、台風による停電の長期化やエネルギー代金の域外流出といった島特有の課題解決を組み合わせています。
オンサイトPPAによる太陽光発電と蓄電池の普及
宮古島市はオンサイトPPA方式を軸に据え、建物の所有者が初期費用を負担せずに太陽光発電と蓄電池を設置できる体制を整えています。
すでに約1,000件規模でPPA事業の実績がある宮古島未来エネルギー社に加えて、地域内で新たに事業を担うPPA事業者の育成も進める方針です。戸建住宅から公共施設まで幅広い施設を対象に、令和6年度から段階的に設備の設置を進めています。
脱炭素グリッドが担う電力潮流のリアルタイム管理
PPAで普及した太陽光発電と蓄電池を束ねて動かす中核が「脱炭素グリッド」です。
- 対象地域の境界に設置した計測器(VCT)で、地域に出入りする電力の潮流を常時計測
- 計測データをもとに、アグリゲーターのネクステムズ社がEMSを通じて太陽光発電や蓄電池へ充放電の指令をリアルタイムで送信
脱炭素グリッドにより、系統からの化石燃料由来電力の流入を抑え、地域で発電した再エネ電力のみで需要を満たす体制を目指しています。
5Grids推進で暮らしのデータを一括把握
脱炭素グリッドの運用精度を高めるために、宮古島市では「5Grids」と呼ばれる独自の取り組みも進めています。
5Gridsとは
地域内の全世帯にゲートウェイ機器を設置し、電気・水道・ガス・交通の使用状況をまとめて計測する取り組みです。
複数のデータを組み合わせると生活上の異変にも気付きやすくなり、住民の省エネ行動を後押しする効果が期待されています。台風接近時の防災情報の発信や高齢者の安否確認など、暮らしの質の向上にもつなげる計画です。
空き家を再エネ宿泊施設として活用
下地地区と狩俣地区では、Uターン希望者の受け皿となる住宅が不足している一方、地域内の空き家が増え続けている点も課題となっています。
宮古島市はこの2つの課題を組み合わせ、空き家に太陽光発電と蓄電池を設置したうえで断熱改修を施し、観光客向けの宿泊施設や住民の一時的な滞在先として活用する取り組みを進めています。
宮古島市の脱炭素まちづくりまとめ

宮古島市の脱炭素の取り組みで一貫しているのは、系統が独立した離島という制約を、地域内で電力を完結させる強みへと転換させる発想です。
太陽光発電と蓄電池の普及にとどまらず、潮流計測とEMSによる制御、生活データの活用、空き家を通じた住宅問題の解消までを一体的に組み立てている点に特徴があります。
観光と農漁業を主力産業とする宮古島市にとって、これらの取り組みは電力の安定供給や地域経済循環にもつながるものです。

